3月2日(土)、大阪のTOHOシネマズなんばで杉咲花が、上映後に舞台挨拶を行った。
満席の観客から大きな拍手で迎えられた杉咲は「大切な時間をこの映画に割いていただいてありがとうございます」と感無量の面持ちで挨拶し、舞台挨拶は始まった。
大阪が舞台だったNHK連続テレビ小説「おちょやん」で約1年大阪に住んでいた杉咲は、MCから「おかえりなさい」と声をかけられると「大好きな街なので嬉しいです。私も『ただいま』と言いたくなる。大阪に来ると特別な感情が沸いてきます」と語り、
「朝ドラの撮影中はコロナ禍だったのであまり外出できなかった」と振り返り、今一番行きたいところは「鶴橋」だと言うと、場内からは笑い声も。
「キムチを買いに行きたい」と理由を明かし、さらに「さっき、いか焼きとたこ焼きも食べました。いつ食べても美味しいですよね」と笑顔を見せた。
昨日公開初日を迎えた本作。今の率直な思いを聞かれると「1人なので緊張しますね」とはにかみ、「映画どうだったかな?と聞いてみたい」と言うと場内からは大きな拍手が。
本作の中でも特に印象的な貴瑚が大分で暮らすテラスのある一軒家は「監督と脚本家の方がシナリオハンティングの時に偶然見つけた場所」だったそう。
「しかも、7年ほど前に迷いクジラが見えたそうで、ご縁を感じています」と語る。
「景色が本当に美しくて、天気にも恵まれて」と振り返り、東京での撮影後に大分で撮影したこともあり、
「心が開けていく感覚があった。大分の土地の力もあったと思います」と思い返していた。
また、成島出監督と初めて会った時に「飛び込んできてください」と言われ、
「作品の主役は主人公や監督ではなく、作品そのものだから、キャリアや役割といった垣根を超えたところでものづくりをしていきましょう」という言葉をかけてもらったと語る。
撮影でも常に価値観のすり合わせが行われていて、こんなにも真摯に取り組める環境を用意してくださったことに感謝しています」と話した。
続けて、貴瑚にとって特別な存在であるアンさんを演じた志尊淳については、「全てのシーンが強烈に私の中に残っている」と思いを語り、
「貴瑚が母親に別れを告げに行くシーン撮影では、本番直前に必ず志尊くんが私の顔をじっと見つめてくれる。向けられる眼差しだけで心に届いてくるものがあった」と振り返り、
「カメラに映らない時間こそ、すごく大切に愛情深く常に傍にいてくださった」と感謝の気持ちを述べた。
さらに、「志尊くんから言われた言葉」として、「僕はアンさんのことをすごく尊敬しているけれど、自分はアンさんみたいな選択はできないんじゃないかと思う。
だからこそ、現場で過ごす以外の時間もアンさんのように寄り添っていたいと思った」とおっしゃっていて。本当に素晴らしい共演者の方に恵まれたと思っています」と
深い感謝の思いを語った。
そして、上映後の舞台挨拶だから話せる裏話として「エンドロールに、夕陽を見つめる2人の背中が映っていると思うんですが、当初は撮る予定ではなかったんです」と語り、
「別のシーンを3回に分けて撮影している時に、ものすごく美しい夕陽が差し込んできて、何が起きているかわからないまま撮影しました」と明かした。
また、裏話として「あの堤防にはフナ虫が大量発生していて」と明かすと場内からは驚きの声が。
「綺麗な夕陽を見つめて3分間ぐらい立ち続けていないといけなかったんですが、人間がじっとしているとフナ虫が迫ってくるので、私たちは怯えながら立っていました」と笑顔に。
最後に、杉咲さんが「人の痛みを全てわかることはとても難しいことだと思いますが、わからないことは決して無力ではないと思っています。
わからないからこそ、相手のことを知ろうと思えたり、優しくしたい、隣にいたいと思える。どうか諦めないで人と関わっていこうというメッセージを感じられる
この作品を大切に思っています」と力強く語った。
続けて「私たちは1人でも多くの方がこの作品に居場所を感じてもらえるよう願いをこめて作りました。とても繊細な領域に踏み込んで描いた映画なので、色々な意見があると思いますし、それを受け止めながら、この先も物語に関わっていきたいと思っています。また、出来上がった作品をここに届けにこられるように頑張りますので、良ければまた会いに来てください」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。