本作の公開を記念し、2024年7月に東京で開催、7万人の動員を突破した「行方不明展」やフェイクドキュメンタリー番組「TXQ FICTION(ティー・エックス・キュー・フィクション)」の「イシナガキクエを探しています」などのプロデュースを手掛けたテレビ東京の大森時生プロデューサーと『サブスタンス』が脚本賞を受賞した同年に『ナミビアの砂漠』で第77回カンヌ国際映画祭にて国際批評家連盟賞を女性監督として史上最年少受賞を果たした山中瑶子監督が登壇、司会にホラーファンとして知られる声優の野水伊織を迎えたトークセッションイベントを4月18日(金)に開催!なぜ本作はこんなにも世界で熱狂を呼び続けているのか?フェイクドキュメンタリーでホラーファンから大注目を浴び、今最も次回作が待たれるプロデューサーのひとりである大森と、日本の映画賞レースを席巻する新進気鋭の映画監督の山中が、それぞれの視点で<ここだけでしか話せない『サブスタンス』トーク>を繰り広げました。
先んじて本編を鑑賞し、打ちのめされたという二人。「行方不明展」やフェイクドキュメンタリー番組『イシナガキクエを探しています』で知られる大森は「この映画はどうやって終わるのだろうか?と思わせながら、自分の想像を完全に超えたところに到達したのが素晴らしかった」と阿鼻叫喚のラスト30分に目が点状態だった。
『あみこ』『ナミビアの砂漠』で知られる山中監督も「自分の想像を軽々と超えて来て、最後は泣いちゃった。でもなぜ自分が泣いているのかわからなくて…。スターもモンスターも対等に扱われない点では同じなんだな、というところに切ない気持ちになりました」としみじみ。この日で二度目の『サブスタンス』おかわり鑑賞になったそうだが「二度目の観賞なので、ストーリーも知っているので。心に余裕もあるかなと思ったけれど…そういった猶予すら与えない。この映画支配力が凄くて。唖然としました」と再び圧倒されたことを告白。
また大森は、本作のジャンルについて「(こうしたジャンルは)デヴィッド・クローネンバーグ監督作のようにアートや個人の話になりがちだけど、本作では一人で抱え込まずに妙にみんなを巻き込んでいく。ホラーってこんなにエンタメに昇華出来るんだというのも発見だった」と驚けば、山中監督も「クライマックスの『あの場面』は、あれが大みそか特番の生放送として中継されていると考えると気持ちがいい。この問題は全員の問題だ!と言わんばかりに、その場にいる全員を巻き込んでの阿鼻叫喚が良かった。元気とパワーをもらえるし、爽快感すらある」と壮絶な大団円を絶賛。
ホラーである一方、様々なメッセージが込められてもいる本作。それだけに大森は「正直、ホラーという視点では観ることが出来なかった。ジャンルでカテゴライズするとしたら何だろうか…。そう迷ってしまうくらいエンタメしているとしか言いようがない」と頭を悩ませると、もともとホラー映画は苦手という山中監督は「私は怖いのも痛いのもビックリするのも苦手だけれど、それでも嫌ではなかった。最後の30分は、もっとちゃんと見たい!と思わせるのだから不思議。最後まで付き合うぞ!というスポコン感があった」と『サブスタンス』にしかない世界観にドはまり。
体当たり熱演した主演のデミ・ムーアについて大森は「(ある男性と)食事に行こうかどうか迷うシーンの演技が実は一番凄かったと思っている」と演技派としてのムーアの表現力に唸る一方で、山中監督は「この映画で何を描きたいのか、それを<理解していないと出来ない芝居>を全員がしている。滑稽さも理解したうえで、自ら滑稽になっている。この映画と同じことをやろうとするのは難しい。あそこまで曝せないと思うから。チーム全員がやるべきことを理解して映画作りに挑んでいたはず」とキャスト&スタッフを激賞していた。
そんな本作を一言で表すならば、山中監督は「ご自愛ください。自分をケアしよう」と評する。そして「まるで二日酔いの辛さを大きくしたようなところのある映画なので<先の事を考えて自分を大事にしよう>という様なメッセージを受け取りました」と解説。大森は「成長物語であり人生」と言う。つまり「ラストを見た時に、人生ってこんなものなのかな、と思ったので」と深みを味わっていた。
最後に山中監督は「大衆がこぞって観るジャンルではないかもしれないけれど、『サブスタンス』に関してはこぞって観に行ってほしい。それくらい良く出来ている映画で、このような映画をどこもかしこも皆が観ていたら嬉しいし、それこそ素晴らしい事です」と大ヒット祈願。大森も「こんなに変でこんなに面白い映画はあまり無い。色々な映画賞にノミネートされたりしたのも映画的に夢のある話。ここ日本でもヒットして欲しいです。僕も改めて映画館で二回目を観るつもり」と宣言した。
美への執着と、成功への渇望がせめぎ合い、やがて狂気が侵食していくー脳裏に焼きつくヤバすぎるラストシーンから、一度見たら逃れられない!想像のはるか先で暴走する<狂気のエンタテインメント>『サブスタンス』をぜひご期待ください!