2018.10.24 POSTED

池上彰さん×井上咲楽さん 登壇イベントレポート

本作の字幕監修に携わる池上彰さんと、自民党の若手国会議員の有志で結成された「若者の政治参加検討チーム」の会合に参加するなど、政治への関心が高く弱冠19歳にして歯に衣着せぬ物言いでワイドショーでも話題の、井上咲楽さんの対談イベントを行いました!

以下詳細レポートです。

▲本作の感想

池上彰さん:「中間選挙までちょうどあと2週間に迫った中で、アメリカで何が起きているのか、これからどうなるんだろう、どういう動きをしていくのか、特に若い人たちがどのような行動をしようとしているのか、をマイケル・ムーア監督が活き活きとあくまでも一断面ですが描いているな、と思います。日本でも多くの方に見ていただきたいです。」

井上咲楽さん:「ムーア監督がフリントの水を知事の屋敷に放水したのはぶっ飛んでいるな、と思いました。あとはアメリカの選挙制度にびっくりしました。アメリカの選挙制度のおかげでトランプ大統領が誕生したんじゃないかなと思います。純粋な多数決ではないので、民意を反映しているのではないんじゃないかなと思いました。」

▲字幕監修された池上さんへ感想

池上彰さん:「過去にもやったことあるんですけど、字幕を作るプロの方がいらっしゃるので、どうしても私が説明しようとなると、「長くて入りません」、と言われるんですね。今回監修した一例としては、FOXニュースの映像の部分で”News Alert”と出て、普通は”ニュース警報”と訳すんですが、どんどんニュースが出てくるので、”ニュース速報”、としました。実は相当時間をかけていて一つ一つ詰めて行きました。そもそも字幕を作ってくださる方がしっかりしているので、大丈夫なのですが、それをあまり政治が分からない人のために味をつけた、調味料をつけた、という感じですね。」

▲井上さんへ「なぜ政治ガールになったのか。」

井上咲楽さん:「今年に入って、”額賀派の分裂”というニュースが飛び込んできて、響きが面白い言葉だなと思って、調べていくと、どうやら人の名前らしいということが分かって、「政治家の名前かあ」と思ったんですが、そこから調べてくと、どんどん政治のパワーゲームの面白さに気づいて、どんどんハマって行って、総裁選もがっつり取材しました。」
池上彰さん:「すごいですね!額賀派の分裂なんて渋いですね〜。額賀と読めただけすごい!」

井上咲楽さんから本作を観て疑問に思ったことを池上さんにぶつけるコーナーへ。

①意外にも!?トランプ大統領は高い支持率!?

井上咲楽さん:「トランプ大統領が勝利したのはアメリカが分断してきたことの象徴なのかな、と思ったんですけどトランプ大統領は支持されているんですか?」

池上彰さん:「ここのところ支持率を伸ばしてきて、急激に45%くらいになってきていますね。ただ、不支持率の方がまだ高いですが。これまで共和党を支持している人たちがトランプ大統領を支持していたんだけど、中間選挙にはあまり興味がなかったんですね。ところが最高裁判所の判事を認めるかどうかというところで、昔のセクハラの話が出てきたでしょ?学生時代にセクハラをしたんじゃないかっていう話になって。上院議員が最高裁判所の判事になっていいかどうかを決めるんですね。ここで51人の賛成があれば最高裁判所の判事になれるのね。ここで民主党が激しく追及しているんだけど、そうすると、共和党の支持者の保守的な人たちはそんな昔の話を今更しているのか、って思ったり、最高裁判所に保守的な判事が入ると、同性婚を認めていることをやめろって言ってくれるんじゃないか、とかLGBTの権利を認めない、とかいう風にしてくれるんじゃないかという期待が共和党の支持者から出てきて、その人たちが中間選挙でも共和党を支持しようかなって急激に思ったり、トランプ大統領よくやっているんじゃないか、って思ってきたりしたんですね。日本だとそんな感じはあまりしないんですけど、アメリカ国内だとよくやっているじゃないか、って思われているんですね。一番わかりやすいのが、トランプ大統領が“俺のおかげで北朝鮮はミサイル打たなくなっただろ?核実験やらなくなっただろ?”ってよく言っているんですが、それを言うとトランプ大統領の支持者は“お〜そうだそうだ!”と思うわけですね。

②社会人1年目で2000万円の借金!?過酷すぎるアメリカの大学生

井上咲楽さん:「若者の51%が資本主義を支持していないって本当なんですか?」

池上さん:「アメリカって格差が広がってきて、資本主義によって格差が広がってきているんじゃないか、と言って今の仕組みに懐疑的な若者が多いのは事実だよね。日本では民主社会主義ってよくあるんだけど、”社会”って入っているだけで、アメリカにはまだ拒否反応があるんだよね。バーニー・サンダースの政策で若い人が熱狂したのが、公立大学の学費無料というのなんだよね。私立の大学って400万円〜500万円かかるんだけど、アメリカの大学生って自立しているから、親に大学の学費を出してもらおうと思わないんだよね。だから大学出た段階で2000万円の借金を背負って社会人になる。そんな時にバーニーがせめて公立大学の学費を無料にしようって言ったんだよね。アメリカは大学に行きたいっていう人が行く、日本では親が頼むから大学にいってくれってなるよね。だから日本だと授業サボったり、居眠りしたりするんだよね。」

③スキンヘッドのヒロイン銃撃事件生き残りの高校生エマ・ゴンザレス

井上さん:「パークランドでエマ・ゴンザレスさんが演説していたじゃないですか?自分で訴えかけなければならない状況に追い込まれているっていう状況に心が痛みました。」

池上さん:「彼らの訴えはこの世界から銃を無くそうっていう話じゃないんですね。彼らは銃をやめましょうではなくて、なんでも気軽に手に入るようにしないで、全米レベルで気軽に買えないようにしてください、という訴えなんだよね。日本では銃をなくせっていう運動をしていると勘違いされているのが多いですよね。それでも全米ライフル協会から献金をもらう政治家がたたないですよね。ライフル協会の人たちがそれぞれの地区の候補者に“銃を規制しなければならないと思いますか?”というアンケートをとるんですね。そのアンケートを元に銃規制に賛成ではない候補の悪口をCMでかけたりするんだよね。それを見てしまうと、候補者は銃を規制すべきだって言えないんだよね。たまにいるんだけど、それは次の選挙にもうでない人が言っていたりするんだよね。劇中でもライフル協会から献金をもらうのやめてくださいと追求された若い新進気鋭っぽい候補者が困った顔していたよね。」

井上咲楽さん:「ほんと!進次郎さんみたいな人が困っていた!」

■最後に「2020年にトランプの再選はありえますか?」

井上咲楽さん:「私はこの選挙制度が変わらない限り、同じことが繰り返されるのではないかと思います。」

池上彰さん:「今選挙するとトランプさんが圧勝しますね。2020年までに民主党から素晴らしい対立候補が出てきたらいいですけど、そうでもなければトランプ大統領再選の可能性がありますよね。」

ここで、井上さんをミレニアル世代代表として『華氏119』の宣伝隊長に任命することに!
“「華氏119」宣伝隊長”と書かれたタスキが池上さんから井上さんに渡された。タスキを渡されて「頑張りますー!」と井上さんは力強く意気込んだ。

最後に「私たちの世代でもトランプさんはぶっ飛んでいるという印象はあると思うんですけど、一体何をしているんだと分かると、外国のニュースが面白くなるんじゃないかなと思うので、観て欲しいです。」と井上さんが、「今回の映画ではトランプがなぜ当選したのか、実はそこには民主党がだらしがないから、民主党が支持を失っているから、そしてそこにはオバマ大統領の責任もあると描いているところが非常に衝撃的ですよね。だからこそ次の中間選挙で何が起きるのか見る必要があるのではないかと思います。大統領選挙が期末テストだとすると、中間選挙は学校の中間テストのようなもの。これまでの2年間の仕事ぶりに関して評価されるのが中間選挙です。」と池上さんがここでも”分かりやすく”解説し、イベントは幕を閉じた。