ポラロイドカメラがキラーアイテムになるという着想はどこから得ましたか?
父親が写真家だったので子どもの頃からカメラには触れていて、ポラロイドカメラにも元々興味を持っていました。それで現代の世界、特にSNSとかテクノロジーに執着している十代の子たち世界に、前の時代の古い機材(ポラロイドカメラ)を持ち込んでみたいとおもいました。映画にポラロイドカメラを取り入れることで、その存在を知らないティーンエイジャーたちが、それが何かというのを自分たちで見つけなければいけない、しかも本当だったら美しい写真を撮ってくれるものなのに、それが彼らの死の原因になってしまうというのがおもしろいと思ったんだよね。
SX-70にしたのは、スマートで美しいデザインが気に入っていたから。なぜ、ポラロイドにしたのか…。ポラロイドカメラはデジタルで撮影するものと違って、一切いじることができないというところがすごいクールだなと思って。それはつまり、撮ったら最後何もできない。つまり逃れることができないというところが物語に繋がっています。今の世代の子たちは、写真というものはSNSに載せる前に自分が望むベストな状態に修正し操ることができるという環境に生まれ育っているから、ポラロイドカメラで写されたらその状況は操ることができないにも関わらず、操りたいとおもってしまうところがおもしろいよね。偉大なホラー映画…例えば、日本の『リング』のVHSテープとか、これもカメラの映画だけど『シャッター』とか、そういった作品からインスピレーションを受けて古いアイテムを持ち込むことにしました。そして単純に作り手として、色んなことを掘り下げることができるアイテムだったっていうのも選んだ理由です。
短編『Polaroid』がトレモリノスファンタスティック映画祭で「最優秀ショートホラーフィルム賞」を受賞したのがきっかけで、本作『ポラロイド』の制作に繋がったと思いますが、その経緯を教えてください。
短編の方は、もともとホラー映画を作りたいという気持ちがあって。ある日、若い女の子達が自分達で写真を撮って現像すると影が現れてくるというイメージが突然ポーンと頭に浮かんできて。そのイメージを消すことができず、そのアイディアの周りに物語を構築していったのが短編の『Polaroid』なんです。そこに、若者たちがSNSやテクノロジーにいかに中毒になっているかという社会的文脈を付け加えました。例えば、自分の裸やセクシーな写真を彼氏や元カレに送ったりする。その行動のリスクは分かっているはずなのにオンラインでそういうことをしてしまう。そういった今の世の中にポラロイドっていうアナログの要素を持ち込んでみたかった。今の若者たちはテクノロジーに執着しているから、古い写真機を見つけたらそれが何なのかを知りたい、そういう執着に繋がっていく。そしてその執着が彼らの死を招くという物語に繋がっているんです。この短編を観たダイメーションという制作会社が長編をやらないかって声を掛けてくれて。自分としてもこれが足掛かりになるんじゃないか、それにいいものが作れるんじゃないかという予感があって提案を受けました。
ロイ・リー(『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』プロデューサー)との仕事はどうでしたか?
僕はもともと彼のファンで、今までの業績とかプロデュースの方法が素晴らしいと思っていたので、彼から声を掛けられたときはすごく感動しました。ホラー映画について豊富な知識を持っているし、特に『リング』や『呪怨』といった日本のホラー映画をハリウッドに紹介した立役者でもあるしね。彼は観客が何を求めているのかがはっきりと見える人で、監督としての自分を導いてくれる存在でした。例えば『呪怨』のような神秘的な雰囲気のものを、アメリカの監督がどう届ければいいか、どういう風に見せるのかってことがわかっている人なんだよね。この作品には彼の存在が欠かせなかったよ。
ホラー表現において何か影響を受けたものは?
『ポラロイド』は間違いなく日本の幽霊ものからインスピレーションを受けています。『リング』のVHSテープのように、古いものを物語に持ち込むところとか。日本の古い迷信「カメラに撮られたら魂が抜かれる」というのも知っているよ。特に写真が鍵となる日本の幽霊ものを基にしたこういった作品の撮影をしていると、現場でどこか不穏な雰囲気が漂っていて。誰かがセルフィーを撮ったり、写真を送ったりすると、「やっぱりこれって…(写ってる?)」みたいなことはあって、不思議なざわざわするテンションはありました(笑)。
影響を受けた好きなホラー作品を教えてください。
『遊星からの物体X』が一番好き。『エイリアン』、『ブロブ/宇宙からの不明物体』(リメイク版)、『呪怨』、『リング』、『セブン』、『永遠のこどもたち』、『シャイニング』、『ジョーズ』も好きだよ。
次回作『チャイルド・プレイ』を製作するにつき、本作『ポラロイド』を経て活かしたことはありますか?
学んだことはあるよ。『ポラロイド』を作っていなければ、間違いなく『チャイルド・プレイ』を作ることは出来なかったと思う。『ポラロイド』は準備が6週間、撮影が25日間、ポスプロが3~4ヶ月という本当にタイトなスケジュールで制作していて。とてもきつかったけど、だからこそ学ぶこともすごく多くて。怖いシーンをどんな風に撮ればいいかとか、物語をどんな風に綴ればいいのか、アクション部分はどうやって演出すればいいのか、『ポラロイド』で学んだことを全て『チャイルド・プレイ』で応用することが出来たんだ。
例えば、アニマトロニクスとかパペットの技術だったり、SFXと本当の炎とか、物理的にその場で出来るエフェクトとCGのエフェクトを両方組み合わせていかにそのシーンを作っていくかみたいなことも含めいろいろと学んだので、それなくして『チャイルド・プレイ』は作れなかったと思います。どの映画も大変だけど、何が大切で何がそんなにこだわらなくて良いのかっていうのはやっていく中で徐々にわかってくるものだしね。
今後挑戦したいジャンルやテーマは?
SFスリラーにホラーの要素が入っているような作品を作りたくて、実は脚本を何年もずっと書き続けているんだけど、長編を2本作っていたので形にする時間が全くなかったんだよね。SFとホラーの組み合わせがすごく好きなんだ。とはいえ”チャッキー“のようにキャッチーでユーモアな要素、今回の『チャイルド・プレイ』にも笑える要素を入れてあるけれど、そういうホラーとユーモアの融合も面白いよね。何かストーリーに自分が動かされるものがあって面白いなと思えれば、何でもこだわらずに作りたいと思っています。