単純ではない悪役 VS 正義に燃えるヒーローの役作り

ドニーは俳優の仕事というのは、時間をかけて演じる役を深く理解し、キャラクターの奥深さを見せていくことだと強調する。「台詞に頼る必要はない。僕らが頼るべきなのは、キャラクターを深め、新境地を開く演技のディテールだ。僕は商業的なアクション映画を作っているけれど、ストーリーの中の哲学的な疑問について、よく考える。本作では、もし登場人物の運命が入れ替わっていたら、どうなっていただろうと考えた。答えは、僕の人生観から生まれる」
ニコラスは、彼が演じるンゴウというキャラクターの深さに惹かれたと語る。「ンゴウは月並みな悪役じゃない。観客が最初から最後まで悪い奴だと思うような人物ではないんだ。最初は善人で、素晴らしい警察官だった。チョンとは友好的な関係を分かち合っていたけれど、ある出来事によって、彼と彼のチームは真実の名のもとに一か八かの手段を取らざるを得なくなってしまう。そんなンゴウの性格を表現するために、バタフライ・ナイフを2本使った。観客は彼の暗い面を理解できると思う。ンゴウはとても豊かなキャラクターだ。ベニーも僕も、今までの映画にはない繊細かつ大胆な演技が出来たと確信している」
そんな複雑な役をどう理解したのか、ニコラスはこう語る。「考えるのではなく、のめり込んだ。役者が本当にキャラクターに入り込み、物語の世界観を信じると、言葉では説明出来ない行動に出てしまう。現実に戻って振り返ってみると、僕でも少し戸惑うことがある。映画のマジックとはそういうものだと思うね」