こんな時代だからこそ、
全ての人々に“リスペクト”を――。

こうして完成した映画では、アレサは「人として女性としての真の自由を求めて戦うファイター」としても描かれている。公民権運動の指導者として歴史に名を残すマーティン・ルーサー・キング・ジュニアと交流のあったアレサは、暗殺された彼の葬儀で哀悼の歌を捧げる。さらに、自らを危険にさらしてまでブラックパワーの活動家アンジェラ・デイヴィスを支持する鮮烈なシーンも挿入される。トミー監督は、「自分自身と次の世代のために戦うことの重要さを、今の時代だからこそ示したかった。これらのエピソードは不可欠だったの」と語る。

さらに、本作のタイトルにもなった楽曲「リスペクト」の影響力は音楽の世界だけにとどまらず、人種や男女平等を訴える人々に勇気を与える象徴的な応援歌となった。その他にも、アレサの歌や発言、行動は、現在のフェミニズムやLGBTQ、#MeToo運動の大きな礎の一つだと言える。

今、私たちの暮らしは、大きな転換期を迎えている。世界各国の政治と経済が激しく揺れ動き、そんな危機的状況にパンデミックが拍車をかけた。「自分のことは自分で守らなければならない時代」を生き抜く私たちに、アレサの歌と生き方が進むべき道を照らしてくれる。

「自分自身のアーティストであれ。そして自分のやっていることに常に自信を持て」──アレサ・フランクリン