主役の作家ルイ役を演じたギャスパー・ウリエルは、「この上なく幸せな経験だった」と語る一方で、会話は家族に任せ、自身はほとんど語らないルイ役は難しかったとも振り返る。ドランはウリエルに送った脚本に、小さな手書きメモを添えた。そこには“この役をオファーするのに少々気まずさを感じている。ほとんどセリフのない役に、驚くと共にがっかりするのではないかと恐れている”と書かれていた。「確かに、ほとんど話さない役というのはとても手強い。でもそこにやりがいがあった」と打ち明けるウリエルは、否応なく迫る死に直面しているルイを、歩く死人、幽霊のような存在として表現しようとしたという。
セリフが少ないために、ウリエルにとって微妙な演技をキャプチャーしてもらえるかどうかがすべてだった。「今回のような至近距離での撮影では、呼吸、まばたきのひとつひとつをカメラが捉えてくれるという感覚が素晴らしかった。」
ウリエルは、ルイはラガルス自身とリンクする部分があり、若くして成功したアーティストが家族の元に帰るという点で、もしかするとドラン自身の経験も投影されているのかもしれないと指摘する。