キャラクターに魂を与えた
完璧なキャスティング
ヨン監督は、「キャスティングはとても重要だった。結果、すべての俳優がそれぞれのキャラクターにずばりとはまったと思う」と、自信たっぷりの笑顔を見せる。
主人公のジョンソク役は、これまで幅広い役を演じてきたカン・ドンウォンにオファーされた。カンにとって、この役の感情を理解することは非常に重要なことだった。海外に滞在しながらも、ヨン監督とビデオ電話で定期的に打ち合わせをしながら、役の動機やその他の特徴について話し合ったという。「カンにしか演じられない役を作り上げた。アクションシーンでも、感情が溢れてくるようなキャラクターだ。彼の目から伝わってくる想いがあまりにも強烈で、ついつい引き込まれてしまう」とヨン監督は絶賛する。基本的に撮影がない時も、常に体を鍛えているというカンは、特別な準備は必要なかったと振り返る。だが、感染者とのバトルシーンの動きは、かなり複雑だったために、感染者役の俳優たちと一緒に合わせながら練習したという。
ヨン監督は、ワイルドな戦士ミンジョン役に、アクション大作への出演は初めてのイ・ジョンヒョンを選んだ理由について、「ミンジョンは必ず生き抜くという強い意志を持つと同時に、子供たちの前では温かな母性を発揮する。だから様々な顔を演じられ、その存在に説得力のある俳優でなければならなかった。そう考えた時、真っ先にイ・ジョンヒョンが頭に浮かんだ」と説明する。イ本人は、「私が思い描いていた役のコンセプトや見た目が、ヨン監督の考えとぴったり一致した時は、非常にうれしかった。監督のキャラクターに対する解釈がはっきりしていたので、現場ではそれぞれの俳優が自分の演技により集中することができた」と回想する。銃を構えるポーズから発射まで、動き一つ一つに気を配り、カーチェイスや射撃戦もこなせるような、強い女性像を作り上げたという。
俳優の中の俳優、唯一無二のクォン・ヘヒョは、ミンジョンの家族と一緒に暮らすキムを演じる。かつては軍隊の士官だったが、退行性の病気にかかってしまう。それでも、いつか誰かが自分をここから救い出してくれると、どこかで信じている。「彼の演技は本当に素晴らしかった。子役たちをひっぱってくれたし、誰もが目指したくなるような存在だ」とヨン監督は称える。
子役のイ・レとイ・イェウォンは、共に未来を担うスターだ。感染者や民兵だらけの世の中しか知らない子供たちで、生き残るために感染者から逃れる術を既に身につけているという設定だ。「観客は、イ・レにくぎ付けになるに違いない。この小さな俳優を起用して正解だった」とヨン監督は胸を張る。イ・レによる手に汗を握るカーチェイス・シーンに、多くの観客が驚くに違いない。一方、イ・イェウォンの演じる役は底なしに明るく、地獄に差し込む一筋の光のような存在だ。ラジコンカーで、感染者の集団の気を逸らすのが彼女の特技だ。「彼女はカメラの前で自由自在に感情を操ることができる。本当に驚かされたよ」と、ヨン監督は称賛を惜しまない。
生き残った人間たちを殺すのが趣味で、感染者よりも危険な存在として登場する第631部隊のファン軍曹役には、キム・ミンジェが選ばれた。「ファン軍曹は、この新しい世界に最も馴染んでいる人間だ。キム・ミンジェは、この野蛮な人物を見事に演じてくれた」とヨン監督は語る。キムはこの役に息を吹き込み、新鮮な人物を作り上げた。
ク・ギョファンは、民兵のソ大尉役を依頼された。クは何年もの間、数々のインディペンデント映画に出演し、映画界で確固たる地位を築き上げた。ソ大尉は非常に野心的で、自分の目的を果たすためなら手段を選ばないタイプだが、希望と絶望の間を行き来するような複雑な感情も抱いている。ヨン監督は、この役に衝撃的な要素を与えてくれるような役者を探していたが、クは完璧にそれをやってのけた。
ジョンソクの義理の兄であり、謎のウイルスから逃れたもう一人の生き残りであるチョルミンを演じるのは、個性派俳優のキム・ドユン。『哭声/コクソン』での演技が、人々の心に深い印象を残した。「チョルミンの役は、キム・ドユンが演じると想定して書いた」とヨン監督はあて書きだったと打ち明ける。闘いのスキルもなく、ごく普通の男であるチョルミンは、観客が最も感情移入できるキャラクターでなければならなかった。「キム・ドユンのすべてがチョルミンを体現している」とヨン監督は語る。