Production Noteプロダクション ノート

手持ちカメラを駆使した、ダブリンでのロケ撮影
ダブリンには80年代から変わらない建築物が数多くあったことから、スタジオ内に広大なセットを作るのではなく、 ダブリン市内や周辺でロケ地を探すことになった。変わってしまった所は、美術担当がレトロ風なデザインを加えて その時代に戻す作業を施した。シング・ストリート校には、リフィー川近くの市の第8区にある公立のクリスチャン・ブラザーズ・スクールが使われた。
カーニーは作品の色合いを、80年代のアイルランドの街並みのくすんだ灰色と、当時のミュージック・ビデオの鮮やかな色彩を混ぜたものにしたと語る。 「あの頃、『トップ・オブ・ザ・ポップス』を見て、デュラン・デュランのビデオのようなすごい世界がロンドンにあると想像し、 早く行ってみたくて仕方なかった。だから、コナーが撮影したビデオと彼の想像の世界はテクニカラーで描いたんだ。」
カーニーはセットにキャストを自由に入れて、公式な撮影計画リストなしにシーンを作っていった。オーバックはそれに応えるために、 大きな照明をやめて、移動撮影用の台や機材も使わず、全て手持ちで撮影した。その時の様子をオーバックは、 「床に立ち位置を示す印はない。子供たちが行きたいところに行かせるんだ。彼らの伸び伸びした動きに対応できるように、 広角レンズを肩にかけ、素早くシーンを決めていった」と語る。それは、歌って踊る彼らを捉えるのにも役立った。
「役者に即興の余地を少し与えて、脚本を自分なりに解釈させるのが好きだ」とカーニーは打ち明ける。 「子供たちに、セリフを忘れたら、そのまま続けて何か言ってごらんと、けしかけたんだ。彼らが言うことは、時に私が書いたセリフよりも面白かったよ。」