モデルとなった本人に
密着した役作り
カッセルは、ステファン本人に会いに行き、時には一緒にドライブもしたと振り返る。「彼の立ち居振る舞い、人間性を観察するためだ。演じる時には、登場人物の持ち味を出すことが大事だからね。彼の個性を知るのは大切なことだった。具体的には、彼のヤギひげと目線を取り入れた。彼は相手が落ち着つかなくなるからと、あまり人と目を合わせない。それから、心配そうな表情もね」
カテブの方も、毎朝ワゴン車で自閉症の子供たちを自宅へと迎えに行くダーウドの車に同乗させてもらったという。「ステファンやダーウドの温かみのある対応を目の当たりにして、責任の重さをずっしりと感じた。彼らの気持ちをくみ取って演じなければならないからね」と語る。
完成した作品を観たカッセルは、「二人の監督は、僕自身が今まで役者として自分が持っているとは知らなかったもの、うまく出せるかどうか分からなかったものを引き出してくれた。この作品は自閉症についてではなく、他人への愛、そして献身について描いた映画だ」と語る。ステファン本人も、「彼らは我々の運営方針をありのままに描き、自閉症の人々へのケアについて世の中に明かしてくれた」と称賛する。