涙の裏にも必ず笑いは
あるという監督の想い

トレダノは今まで監督してきたコメディで、「笑いの裏に涙がある」と言ってきたが、本作ではどんなに辛い状況でも「涙の裏に笑いがあった」。その最大のシーンは、ラストだとナカシュが指摘する。「あのシーンには、映画のエッセンスが凝縮されている。厳しい内容かもしれないが詩的で、動きや音楽があるから救われる。ダンスが終わって、ジョゼフは今まで踊っていた円陣の中央へと戻って行く。一人でライトの下に佇む彼の姿は、すべての登場人物の闘いを投影している。彼らの闘いとは、弱者の支援を第一に考え、絶対に目を背けずに関わっていくということだ」
トレダノが補足する。「自閉症の子供たちの症状はそれぞれ異なっていて、各々の世界を持っているけれど、一緒にダンスを踊ることはできる。ピリピリして人とのコミュニケーションを断ちたい時でも、子供たちのダンスを見れば心が洗われる。それは、僕らだって同じだ。撮影前に彼らからもらった感動を、映画の中で表現したかった」
カッセルもそのシーンを、「突如、ウワッ、なんて素晴らしい! と驚かされる」と絶賛する。カテブは、「ダンスが始まって、演技はやめて観客席に座った。俳優は時には真実を嘘のように見せかけ、嘘を真実のように見せるけれど、自閉症の子供たちには真実しかないんだ」と熱く語る。