主役のスージーを演じるダコタ・ジョンソンは、『胸騒ぎのシチリア』出演中にグァダニーノ監督から『サスペリア』への出演依頼を受けていた。「『サスペリア』のリメイクの計画があるけど、また一緒に仕事をしないかと聞かれたの。そのときにはもう、わたしと監督は強い信頼関係を築いていたから、私は彼が監督するものならなんでもやろうと思ったの」ジョンソンはその後、アルジェント監督の『サスペリア』を観て、多くの映画マニアの心が揺さぶられた理由をすぐに理解した。「本当に視覚のフルコースみたいな作品。なぜこの映画が何十年もの間、こんなにホラー映画というジャンルに影響を与えてきたかよく分かったわ。まったく古くなっていない。今でもうっとりする」。出演にあたり、ジョンソンはキャラクターの過去、未来、ダンスとの関係を練り上げた。「(平和主義と無抵抗をかかげる)メノナイト派キリスト教徒の家庭で育ったスージーは、生まれながらにして、彼女の魂がその宗教やそこにいる人々、そして規律と合わないと感じていたの。スージーは世界中を探検したいし、社会やセックスについて視野を広げたいとも感じている。彼女自身が気づいているかはわからないけど、彼女には生まれながらたくましさが備わっている。彼女は知らない世界に放り出された子羊のように、すべてに驚きはするけれど、臆病者ではない。なぜならそれは、彼女の望んでいることだから。彼女はすべてを手に入れたいと思う。当時のベルリンでは、女性がそんな行動をすることは珍しく、攻撃的とも見なされる。彼女の無邪気さは危険をはらんでいるの」撮影は彼女にとって素晴らしい経験だった。「愛情にあふれた現場だったわ。考えてみて、40人の女性キャストたちと閉鎖されたホテルで猟奇的な映画を撮影するなんて、ものすごいことよ! 実際、月経周期まで全員同じだったの。すべて魔法のようだけど、助け合い、愛情、心からの深いつながりがあった。そして、とても解放的だった。そこで撮影されたものを世界中に見てもらえることを誇りに思うわ」ティルダ・スウィントンは語る。「もう覚えている限りずっと、私はルカと『サスペリア』のことを話し合って計画してきたの。長い年月をかけて試行錯誤をしたから、プロジェクトに深い安心があったし、撮影自体はとてもスムーズだったわ」彼女が演じる役柄について、「ブランは芸術家ね。彼女は天才的舞踏家で振付師、カリスマ性があって、教師としても力を持ち、ダンサーたちに本物の愛や献身を呼び起こす。けれど、彼女の葛藤は激しい。彼女は、ダンスカンパニーの存続のために超自然現象と取引をするの。そして、そのための代償を支払うことになる。アンビバレンスと孤独が、彼女の運命ね。ブランは、魔術を用いることで深く自尊心を傷つけられるの。生き延びた彼女にとって、ベルリンの混沌とした状況が疎外感のもとになっている。美しく陽気なものは去り、“あらゆる美しいものの鼻を折らなければならない”の」