イタリア喜劇の伝統で描く自分たちの40年

ガブリエレ・ムッチーノ監督は、自分の潜在意識の中に常に存在し、「私を形成した映画だ」というイタリア喜劇の典型的な作品に、自由にインスパイアされた映画を作ろうと考えた。たとえば、エットーレ・スコラ監督の『あんなに愛しあったのに』や、ディーノ・リージ監督の『困難な人生』のような作品だ。ムッチーノ監督は、「彼らのような巨匠たちは、私が脚本を書く際に、無意識のうちに導いてくれます」と語る。
しかし、脚本を執筆していく過程で、ムッチーノ監督は、過去の時代の価値観の多くが、現在にはそぐわないことに気づいた。政治的イデオロギー、悪しき富裕層と孤立した貧困層との対立は、もはや現在と過去では同じ意味を持たなくなった。ムッチーノ監督は、「私の世代は、戦後からの復興と好景気、そして1968年の改革を経験した、言わば主役の時代を生きてきた人たちに対して劣等感を抱いています。私たちは非政治的な世代であり、様々なイデオロギーと、現実には活用できなかった政治的知識によって混乱しています」と説明する。
イタリア喜劇の傑作群に、映画的語り口としてのオマージュを捧げながらも、自分たちの世代の生きざまに向き合わなければならない。そう考えたムッチーノ監督は、“自分の生きてきたイタリアの40年の歴史を網羅した作品”を制作しようと決意する。そうして、「作るのが怖い映画だったので、取り組むのに時間がかかりました」と語るプロジェクトに、とうとう着手したのだ。