バックステージの裏側

ドラディはローマ歌劇場の最初のリハーサルを振り返り、「混沌としていた。何もかもうまくいかなくてね。実現するかどうか、みんな不安に思ったよ。ローマとフィレンツェの2つのオーケストラの協力で、極秘でリハーサルを行ったけれど、誰もがそこへ行きたがったが、誰も中に入ることを許されなかった。その中で、唯一気楽に構えていたのが、指揮者のズービン・メータだったんだ。」と語る。カレーラスは「ドミンゴと私はいつも仕事に没頭していたが、パヴァロッティは、ホテルの部屋で料理なんかをして楽しんでいたよ。自分の部屋に人を呼んでポーカーもしていたんだ。」と当時を振り返る。

コンサート当日、「舞台に出る前、3人は抱擁し合い、互いに励ましの言葉をかけ、「幸運を!」と声をかけた。」とメータは感慨深く語る。「3人はとても緊張していたよ。何が待ち受けているか分からなかったからね。お互いに対する競争心もいくらかあったが、みんな冷静を装っていた。私たちは、この競演がどんなに重要な意味を持つことになるのか、想像すらしていなかった。コンサートが終わり、観客が椅子の上に立って拍手喝采を送っている姿を見ながら、自分たちがまったく新しい時代の幕を開けたと実感したんだ。」