アメリカから世界へ
4年後の1994年、ついに再演の時がきた。前回の大成功が導いたのは、報酬、権利ビジネス、契約の複雑化であった。その結果、カラカラ浴場でのコンサートと違い、ドジャー・スタジアムでの打算的なリハーサル映像が残されることとなった。メータは語る。「まったく茶番だったよ。3人は、自分たちが何を歌うのかはちゃんと理解していたが、とにかくうまくいかなかった。私たち4人は、このままでは舞台に出られないと分かっていた。リハーサルにはあと3日しか残っていなかったから、その3日間でなんとかした。これこそ、真のプロの証だよね」
コンサート当日、世界中の報道関係者が殺到し、客席にはフランク・シナトラ等の他、グレゴリー・ペック、ジーン・ケリー、ニコール・キッドマン、トム・ハンクス、ティッパー・ゴアなど、多くのセレブの顔が見えた。そして、3人の歌声はリハーサルの時とは違い観客を熱狂させるものであった。2回目のコンサートは誰にとっても大きな賭けであったが、ドジャー・スタジアムでのコンサートは、クラシック音楽のイベントで過去最高を記録し、三大テノールの世界規模でのサクセスストーリーの始まりとなったのだ!カレーラスとドミンゴは「その後、ウィーン、横浜、ミュンヘン、ロンドン、ニューヨークと世界中を巡り、その度に、カラカラ浴場でのコンサートの不思議な魔力や、ロサンゼルスでの大成功を再び呼び起こそうと試みた。」と語っている。