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高度1万メートルを飛ぶ旅客機を舞台に、航空保安官と殺人犯が繰り広げる頭脳戦で世界を興奮で包み、各国でオープニング興収NO.1をたたき出した『フライト・ゲーム』。主演のアカデミー賞ノミネートの名優にしてアクションスターの名声も確立したリーアム・ニーソンと、彼が「スティーヴン・スピルバーグを継ぐ存在」と絶賛する、監督のジャウマ・コレット=セラの最強タッグが、再び手を組んだ!今度の舞台はニューヨークを走る通勤電車、主人公は保険会社を突然リストラされた男、マイケル。途方に暮れながら10年間通い続けた通勤電車で帰路についた彼の前に見知らぬ女が座り、乗客の中から〈ある人物〉を探し出せば、10万ドル支払うと持ちかける。ヒントはわずか3つ。マイケルは100人の乗客から1人を特定するのは無理だと諦めかけるが、妻と息子の命が危ないと脅され、元警官のスキルを駆使して“捜査”を始める──。やがて〈ある人物〉に関する機密情報が明かされ、物語は電車と共に壮大な陰謀へと疾走していく。終点というタイムリミットが迫るなか、マイケルは遂に6人までに絞り込むが、それは新たな陰謀の幕開けに過ぎなかった。果たして、このミッションの真の終着駅は──?
10年間勤めてきた保険会社を、60歳で突如リストラされた会社員のマイケル。いつもの通勤電車で帰路につき、常連客に挨拶しながらも、頭の中は住宅ローンと息子の学費のことでいっぱいだ。そんな彼の前に見知らぬ女が座り、「乗客の中から、ある重要な荷物を持った人物を捜して欲しい」と持ちかける。ヒントは3つ。常連客ではなく、終着駅で降りる、プリンと名乗る乗客。高額な報酬に抗えず、元警官の経験を生かし捜し始めるが、駅の数だけ仕掛けられた罠に深まる謎、さらには、妻と息子が人質に取られたことを知る。やがてプリンが、国家をも揺るがす重大事件の目撃者であることを突き止め、ようやく6人にまで絞り込んだ時、巧妙に仕組まれていた恐るべき陰謀が明かされる。
4度目のタッグを組むことになった、ジャウマ・コレット=セラ監督と、リーアム・ニーソンは、今回も脚本に大いに魅了された。華麗なアクションやスリリングなサスペンスだけでなく、主人公が良心を試される選択を迫られ、その選択によって自身や電車の乗客、自宅にいる家族までもが陰謀に巻き込まれていく物語についてニーソンは、「ストーリーはノンストップで、ほぼリアルタイムで展開する。ヒッチコック監督の『見知らぬ乗客』や『北北西に進路を取れ』のようだ」と指摘する。コレット=セラ監督は、「コンセプトにおいては、『フライト・ゲーム』の続編だと言える。ヒッチコックの『バルカン超特急』や『裏窓』も思い出すね。主人公の視点で物語を語りたかったので、ヒッチコックの手法を用いて、スクリーンにはずっと列車の中を映し出しながら、別の場所で起こっていることをほのめかすようにした。観客も同じ電車に乗っていると感じられるようにしたかった」と説明する。
リーアムはコレット=セラ監督のことを、「ジャウマこそ真の映画監督だ。映画作りをこよなく愛している。スティーヴン・スピルバーグのようだね。まさに非凡な才能の持ち主だ」と絶賛する。コレット=セラ監督は、限られたロケーションで展開する映画を3本作っている。『フライト・ゲーム』、『ロスト・バケーション』、そして本作だ。プロデューサーのアレックス・ハインマンは、たとえ舞台が1つの設定でも、コレット=セラ監督は途方もないエネルギーを注ぐと語る。「どの作品も、サスペンスと緊迫感に満ち、先が予測できない。ジャウマはまさに現代のヒッチコックだ。シンプルなコンセプトから、スリリングな映画を作る」。プロデューサーのアンドリュー・ローナも、「ヒッチコックは舞台が1つの作品を多く作った。観客がキャラクターとじっくり向き合うことができるからだ。ジャウマもそんな手法を用いている。彼こそ、現代のサスペンスの名匠だ」と称える。「アクションも見どころだが、やはりストーリーの中心は犯人探しだ。疑わしい人間は大勢いる。観客は主人公と共に前へ進み、犯人は誰か、何が目的か、リアルタイムで謎を解いていく。最初から最後まで頭を働かせなければならない。アクション・サスペンスであると同時に、本格的なミステリーでもあるんだ」。
ニーソンが演じるマイケルはシリアスな現実を抱え、これから先の人生と向き合おうとしている60歳の男だ。コレット=セラ監督は、「過去のリーアム作品より、観客が主人公に自分を重ねやすくしようと思った。マイケルは毎朝同じ時間に起き、家族を養うために職場という戦場に行く。これは誰もが毎日行っていることだ」と説明する。ニーソン自身も、「彼がごく普通の男であることに惹かれた」と語る。ローナも観客が魅了されるのは、感情移入ができるからだと同意する。「タフで屈強だけど、親しみやすい。カメラはずっとリーアムを追っているから、観客は彼と一体となって進んでいける」。その結果、マイケルは誰もが応援したくなるキャラクターとなった。観客は、どれほど危険で混乱した状況でも、絶対に切り抜けてほしいと願うのだ。コレット=セラ監督が、ニーソンの役作りについて明かす。「リーアムとは、一緒に仕事をするたびに必ず驚きがある。いつも完全に生まれ変わり、小さな要素やニュアンスをいくつも組み合わせて、新しいキャラクターを作り出すんだ」。格闘シーンの指導は、ニーソンと16回も仕事をしている、スタント・コーディネーターのマーク・バンセロウが担当した。ニーソンは、「その日の撮影が終わると、マークやスタントマンとリハーサルを重ねるのはとても楽しいし、そうしないと自分が怪我をする。体調を整えることが求められるので、毎朝セットへ行く前にジムで45分間のトレーニングをしていた。それも楽しかったね」と振り返る。
ジョアンナ役は、ヴェラ・ファーミガに依頼された。ファーミガが、このプロジェクトに乗車することになった経緯を振り返る。「ジャウマから『リーアム・ニーソンと一緒に電車に乗って、おしゃべりしたくないかい?』というメールが届いたの。『こんなお誘いが来るとは夢にも思わなかった。切符はこちら持ちかしら?』って返信したわ。ストーリーで強く惹かれたのは、人の倫理観を描いているところよ」。マイケルのニューヨーク市警時代の同僚マーフィーは、パトリック・ウィルソンが演じる。ウィルソンは「リーアム・ニーソンと共演できるのが一番の理由だ」と語る。乗客に関しては、コレット=セラ監督は社会の一断面が見えるようなキャスティングにしたいと考えた。ニューヨーク行きの通勤電車は、郊外から都心へと入り、金融街が終点だ。世代も人種も様々な階層の人々が乗り込んでくる。コレット=セラ監督は、「観客の誰もが、いずれかのキャラクターに自分を重ねられるようにしたかった」と語る。そのため、アメリカ出身の俳優だけでなく、オーストラリア、デンマーク、イギリス、スペイン、さらにガーナ系イギリス人の俳優たちが集められた。
撮影は、英国のパインウッドスタジオのサウンドステージと、ニューヨークとして撮影されるロケ地サリー州ロングクロスで、10週間にわたって行われた。ニューヨークの鉄道での撮影許可は下りなかったので、プロダクションデザイナーのリチャード・ブリッジランドはセットを作った。ニューヨークの通勤電車は、通常70~80フィートの長さの客車が6両か7両付いている。そんな大きなセットを作るのは不可能なので、ブルースクリーンに囲まれた1両と半分の車両を使うことにした。頑丈な壁や窓、扉を作り、本当に走っているように上下左右に動かせるようにし、通路の両側に椅子を配して、車両の内外から撮影できるようにした。その重量は、ほぼ30トンに及んだ。車両のセットは、誘導線路の巨大な車輪のセットの上に載せた。電車の中央には水圧ラムがあり、本物のようにガクンと前後に動くようになっている。テーブルや座席の上の物も一緒に動き、扉も開閉する。窓の景色の内側と外側のスライドを客車に付けて、角を曲がる感じを出した。セットは組み立て式で、バラバラに分けることができたので、カメラのクレーンが窓から現れたり、壁から突然飛び出したりして、1つの動きで列車の外観を見せることを可能にし、リアリティが増した。また、ブリッジランドは、天井のレールにカメラを載せる台を作った。これによりカメラは遠隔操作もできて、360度回転できるようになった。さらに、窓の外や駅で見えるものを忠実に再現するために、スタジオに駅のレプリカも作った。グランドセントラル駅、86番街駅、110番街駅、125番街駅は複製を建設し、長く見せるために両端に巨大な鏡が置かれた。終着駅であるコールド・スプリング駅は、イギリス南部の本物の駅を装飾して撮影した。また、撮影監督のポール・キャメロンが、客車をデザインする段階からブリッジランドと緊密に協力し、自然な照明を設計した。窓から入る光は現実を完璧に再現し、列車が地下を走る時には内部が暗くなりすぎないように光を入れた。ブリッジランドは、「今まで私が手掛けた中で、技術的に最も難しいセットを完成させた」と胸を張る。
作:ぬまがさワタリ