女の人生はワケありほど価値が上がる
第30回東京国際映画祭コンペティション作品
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ「ハンナ・アーレント」

ニューヨーク最高の訳あり物件

マンハッタンの最高級アパートメントに同じ夫に捨てられた元妻ふたり。火花を散らす彼女たちのおかしな共同生活が始まる―!

Introduction

夫に離婚を告げられたジェイドのもとに転がり込んだ前妻のマリア N.Y.の超高級アパートメントの所有権を巡って争う二人の、〈訳あり〉人生の行方とは―?

ニューヨークはマンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルのジェイドは、ファッションデザイナーとしてのデビューを控え、初のコレクションの準備に追われていた。ところが突然、スポンサーでもある夫のニックから離婚を告げられる。さらに、傷心の日々を過ごすジェイドのもとに、前妻のマリアが転がり込み、ニックとの契約で家の権利の半分は自分の物だと主張する。1つのアパートメントに持ち主が二人。同じ男と結婚したこと以外は、ファッションもライフスタイルも性格も、すべてが正反対のジェイドとマリアの、プライドとこの先の人生をかけた戦いが幕を上げる──!
モデルとして絶頂期だった10年前に、マリアからニックを略奪して結婚、40歳を迎えた今、デザイナーとしてもうひと花咲かせたいジェイドには、イングリッド・ボルゾ・ベルダル。『ヘラクレス』でギリシャ神話の女狩人アトランテに扮し、J・J・エイブラムス製作総指揮の超大作TVシリーズ「ウエストワールド」でも重要な役を演じているノルウェー人女優だ。働く女性なら誰もが共感する「あるある」を、スタイリッシュかつお茶目に演じた。
40歳の時にニックに捨てられ、故郷のドイツで暮らしていたが、二人の子供も成人し、第2の人生を模索中のマリアには、『帰ってきたヒトラー』、『生きうつしのプリマ』のカッチャ・リーマン。ヴェネチア国際映画祭女優賞にも輝く、ドイツを代表する演技派女優だ。ジェイドのセレブな趣味やこだわりを、毒舌と思い切った行動で次々と斬り捨てる姿を爽快に演じた。 果たして、ニューヨーク最高の訳あり物件の行方は? そして最後に訳ありな二人が辿り着いた幸せになるための〈秘策〉とは──?

『ハンナ・アーレント』の知性派監督とニューヨーカーの脚本家が、今を生きるすべての女性に贈る、爽快なユーモアと最高のエール!

『鉛の時代』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝き、『ローザ・ルクセンブルグ』と『三人姉妹』がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、近年では『ハンナ・アーレント』が日本でも大ヒットを記録、ドイツを代表する社会派映像作家として敬愛されてきたマルガレーテ・フォン・トロッタ監督が、初のコメディに挑戦! 70歳オーバーでの新境地を披露し、本国ドイツやヨーロッパではもちろん、コンペティション部門に出品された東京国際映画祭でも大喝采を浴びた。
斬新でユニークな設定を生み出したのは、「ウディ・アレンを彷彿とさせるセンス」とフォン・トロッタ監督が絶賛する、ニューヨーカーの脚本家パム・カッツ。彼女の才能に刺激を受けたフォン・トロッタ監督が、ファッションデザイナーに転身しようとする一流モデルの華麗なライフスタイルと、ドイツ出身の知性派シングルマザーのナチュラルなライフスタイルが、火花を散らしてぶつかり合う姿を、ドラマティックに描く。
エレガントな最新ファッション、モード界のスキャンダラスな裏話、ロフト付きのペントハウス、モダンアートに囲まれたクールなインテリア、芸術品のようなワイングラス、美しい皿に盛りつけられたシズル感あふれる料理にスイーツ──軽快な音楽に乗せて五感に心地よい映像を次々と送り出しながら、フォン・トロッタ監督が見事に料理するのは、“美の追求・年齢の重ね方・子育てとキャリア・パートナーの存在・資産”など、女性の永遠のテーマ。軽やかな毒とあふれるユーモアをこめて、今を生きるすべての女性たちの背中を輝く明日へと押し出す、最高のエールをあなたに──。

Story

N.Y.の最高級アパートメントに同じ夫に捨てられた元妻が二人。火花を散らす彼女たちのおかしな共同生活の行方は―?

 マンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルのジェイドは、デザイナーとしての華々しいデビューを企画していた。ところが、スポンサーでもある夫のニックから一方的に離婚を告げられる。傷心の中、さらに夫の前妻のマリアが転がり込み、部屋の所有権の半分は自分の物だと主張する、あり得ない事態に。同じ男と結婚したこと以外は、ファッションもライフスタイルも性格も、すべてが正反対のジェイドとマリアのプライドとこの先の人生をかけた闘いが幕を上げた! そんな折ジェイドのブランド経営が暗礁に乗り上げる。部屋を売って資金に充てたいが、マリアの返事はもちろんノー。争いはますますヒートアップしていく。だが、積年の想いをぶつけ合う二人は、自分たちの特殊だけれど特別な絆に気付き始めるのだった―。果たして<訳あり>な二人の人生と物件の行方は?

Staff Profile

マルガレーテ・フォン・トロッタ(監督)

1942年、ドイツ、ベルリン生まれ。女優としてキャリアをスタートし、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督や、元夫であるフォルカー・シュレンドルフ監督の作品に出演する。1975年にシュレンドルフとの共同監督作品『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』でデビューし、続く単独監督初作品となる『第二の目覚め』(77・未)で絶賛される。その後、『鉛の時代』(81)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝き、国際的にも高く評価される。また、『ローザ・ルクセンブルグ』(86)と『三人姉妹』(88)はカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、社会派の名匠としての地位を確立する。
その他の監督作品は、『ベルリン それぞれの季節』(94)、『ローゼンシュトラッセ』(03・未)、『もうひとりの女』(06・未)、『ハンナ・アーレント』(12)、『生きうつしのプリマ』(15)など。新作は、巨匠イングマール・ベルイマンについてのドキュメンタリー映画『Ingmar Bergman』(18)。
2019年5月、ドイツ映画賞にて功労賞を授与予定。

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