疑念の中に<落ちて>いくー

INTRODUCTION

2023年のカンヌ国際映画祭で審査員長を務めた奇才リューベン・オストルンド監督から「強烈な体験だった」と破格の称賛を受け、最高賞のパルムドールに輝いたのが、ジュスティーヌ・トリエ監督の長編4作目となる本作だ。
本国フランスでは、公開3週目にして週末ランキングで1位を獲得し、口コミによる観客の圧倒的な支持を証明。さらに、5週目には観客動員数100万人を越える大ヒットを記録。
第81回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、主演女優賞(ドラマ部門/ザンドラ・ヒュラー)、脚本賞、非英語作品賞の4部門にノミネートされ、脚本賞と非英語作品賞の2部門を受賞。アカデミー賞®最有力の呼び声も、日に日にリアリティを増している本年度最大の注目作が、遂に日本でもその全貌を明かす。

主人公のサンドラ役には、『レクイエム~ミカエラの肖像』でベルリン国際映画祭銀熊賞、『ありがとう、トニ・エルドマン』でヨーロッパ映画賞女優賞を受賞し、本作で本年度映画賞レース主演女優賞の最有力候補となっているザンドラ・ヒュラー。人気作家としての知的なポーカーフェイスの下で、底なしの冷酷さと自我を爆発させる圧巻の演技で、観客を一気に疑心暗鬼の渦へと引きずりこむ。本年度のカンヌで次席のグランプリを獲得した『The Zone of Interest』でも主演を務めている、今最も見逃せない俳優だ。息子のダニエル役のミロ・マシャド・グラネールと、彼の愛犬スヌープに扮しパルムドッグ賞を受賞したボーダーコリーのメッシの、演技を超越した存在感が物語のカギを握る。

事件の真相を追っていくうちに、観る者は想像もしなかった人間の深淵に、登場人物たちと共に〈落ちて〉いく。そこでは、あらゆる価値観が覆され、愛と信頼の意味さえ解体されていく。そして最後に突き付けられるのは、あなた自身を映し出す鏡──今、現代を抉る新たな傑作が誕生した。

あの日、あの場所で、いったい何があったのか?

STORY

これは事故か、自殺か、殺人かー。

人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。
はじめは事故と思われたが、
次第にベストセラー作家である
妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、
視覚障がいのある11歳の息子だけ。
証人や検事により、
夫婦の秘密や嘘が暴露され、
登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。

CASTS

[サンドラ役]

ザンドラ・ヒュラー

1978年4月30日ドイツ、テューリンゲン生まれ。06年にハンス=クリスティアン・シュミット監督作「レクイエム~ミカエラの肖像」で映画初主演を務め、第56回ベルリン国際映画祭において銀熊賞(女優賞)、ドイツ映画賞最優秀主演女優賞他多数の女優賞を受賞。『ありがとう、トニ・エルドマン』(16)では、ヨーロッパ映画賞、トロント映画批評家協会賞、バイエルン映画賞で主演女優賞を受賞するなど国内外で数々の賞を受賞しており、その年のアカデミー賞外国語映画賞のドイツ代表作品にも選ばれた。ジュスティーヌ・トリエ監督とは『愛欲のセラピー』(19)に続き2作目の出演。本作で多くの映画賞レースの主演女優賞にノミネートされ、今年のカンヌ国際映画祭のグランプリに輝いたジョナサン・グレイザー監督作『The Zone of Interest』と併せて、本年度再注目の女優となっている。

[ヴァンサン役]

スワン・アルロー

1981年11月30日フランス、フォントネー=オー=ローズ生まれ。カンヌの批評家週間で上映された『美しき棘』(10)でその名を知られるようになり、16年『アナーキスト 愛と革命の時代』でセザール賞有望若手新人賞にノミネート。17年には『ブラッディ・ミルク』で、セザール賞最優秀男優賞に、19年『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』でセザール賞助演男優賞を受賞している。

[ダニエル役]

ミロ・マシャド・グラネール

2008年8月31日フランス生まれ。大人気テレビドラマシリーズ「En thérapie」(21~)で俳優としてデビュー。その後、オリヴィエ・ブルドーの小説をロマン・デュリスで映画化した『En attendant Bojangles』(21)や、ダニー・ブーン主演『ヒューマニティ通り8番地』(21)などにも出演している。

[検事役]

アントワーヌ・レナルツ

1985年フランス、ノメニ生まれ。17年『BPM ビート・パー・ミニット』に出演し、セザール賞助演男優賞を受賞。その他の出演作に、カンヌ国際映画祭監督週間出品作品『アリスと市長』(19)、オリヴィエ・アサイヤス監督作『冬時間のパリ』(19)、『パーフェクト・ナニー』(22)などがある。

STAFF

[監督・脚本]

ジュスティーヌ・トリエ

1978年7月17日フランス、フェカン生まれ。パリの国立高等美術学校を卒業。長編デビュー作は、カンヌ国際映画祭 ACIDに選ばれセザール賞最優秀長編映画賞にノミネートされた『ソルフェリーノの戦い』(13)。長編2作品目は16年カンヌ批評家週間のオープニングとなり、セザール賞で最優秀作品賞、最優秀女優賞を含む5部門にノミネートされた『ヴィクトリア』(16)。長編3作品目の『愛欲のセラピー』(19)はカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品となり、本作品で見事カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞した。

[脚本]

アルチュール・アラリ

1981年7月9日フランス、パリ生まれ。監督・脚本家・俳優としてマルチに活躍する。初の長編監督作『汚れたダイヤモンド』(17)がセザール賞新人男優賞を受賞、フランス映画批評家協会賞で第1回作品賞も受賞している。その他の作品に、脚本・監督作としてカンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品した『ONODA-万夜を越えて』(21)、出演作に諏訪敦彦監督による日仏合作『ライオンは今夜死ぬ』(18)、ジュスティーヌ・トリエ監督の『ソルフェリーノの戦い』(13)、『ヴィクトリア』(16)、『愛欲のセラピー』(19)などの脚本も務めた。