第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品

DIRECTORʼS STATEMENT

この『ベイビー・ブローカー』の準備をしている日々で話を聞くことが出来た子どもたち。

彼らは何らかの理由で親が養育を放棄し施設で育ったのだが、その中の何人もが、
果たして自分は生まれて来て良かったのか?という
生に対する根源的な問いに明確な答えを持つことが出来なかった。

そのことを知って僕は言葉を失った。

この世に生まれなければ良かった命など存在しないと自分は彼らに言い切れるのか?

お前なんか自分なんか生まれなければ良かったという内外の声に立ち向かって強く生きようとしている
あの子どもたちに向けて、自分はどんな映画を提示することが出来るだろう。

作品作りの中心にあったのは常にこの問いだった。

『ベイビー・ブローカー』はまっすぐに命と向き合い、登場人物の姿を借りて、
自分の声をまっすぐに届けようと思った作品である。

祈りのような、願いのような、そんな作品である。

是枝裕和

『万引き家族』是枝裕和×『パラサイト 半地下の家族』ソン・ガンホ

始まりは約6年前、キャストとの出会いだった―。是枝監督が映画祭で顔を合わせていた韓国の国民的俳優ソン・ガンホやカン・ドンウォン、そして『空気人形』への出演後「また必ず」と誓っていたペ・ドゥナ。彼らと会話を重ねる中で、一緒に映画を、という話になるのは必然だった。この作品の構想中に、監督はカンヌ国際映画祭のパルムドールという最高峰の栄誉に輝き、ソン・ガンホはアカデミー賞®作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』で全世界を瞠目させ、NYタイムズが選ぶ「21世紀の偉大な俳優25人」にも選出された。ここに、韓国トップの歌姫として圧倒的人気を誇り、女優としての新境地に挑むイ・ジウン(歌手名IU)や、「梨泰院クラス」で新世代スターの仲間入りを果たしたイ・ジュヨンらが参加。さらに撮影に『バーニング 劇場版』のホン・ギョンピョ、音楽に「イカゲーム」のチョン・ジェイルと、今最もオファーが殺到する一流スタッフが加わり、是枝監督と韓国最高峰の才能の出会いが、長年温めてきた企画に熱い命を吹き込んでいく。

赤ちゃんを高く売る。それだけのはずだった。

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。

<赤ちゃんポスト>で出会った彼らの、特別な旅が始まるー。

CAST & STAFF

  • ソン・ガンホ

    ソン・ガンホ

    (ハ・サンヒョン役)

    SONG KANG HO (Ha Sang Hyun)

    1967年1月17日、韓国・金海市生まれ。

    クワイエット・ファミリー』(98)
    『シュリ』(99)
    『JSA』(00)第38回大鐘賞 男優主演賞
    『反則王』(00)
    『復讐者に憐れみを』(02)
    『殺人の追憶』(03)第40回大鐘賞 男優主演賞・人気賞
    『大統領の理髪師』(04)
    『南極日誌』(05)
    『グエムル -漢江の怪物-』(06)第1回アジア・フィルム・アワード 主演男優賞
    『シークレット・サンシャイン』(07)第19回米パームスプリングス国際映画祭 主演男優賞
    『グッド・バッド・ウィアード』(08)
    『渇き』(09)
    『義兄弟 SECRET REUNION』(10)
    『青い塩』(11)
    『凍える牙』(12)
    『スノーピアサー』(13)
    『観相師-かんそうし-』(13)第50回大鐘賞 男優主演賞
    『弁護人』(13)第35回青龍映画賞 主演男優賞
    『王の運命―歴史を変えた八日間―』(15)
    『密偵』(16)第53回百想芸術大賞 映画部門 男性最優秀演技賞
    『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(17)第38回青龍映画賞 主演男優賞
    『麻薬王』(18)
    『パラサイト 半地下の家族』(19)第26回全米映画俳優組合賞 映画部門 キャスト賞/第45回ロサンゼルス映画批評家協会賞 助演男優賞
    『王の願い ハングルの始まり』(19)

  • カン・ドンウォン

    カン・ドンウォン

    (ユン・ドンス役)

    GANG DONG WON (Yoon Dong Su)

    1981年1月18日、韓国・釜山広域市生まれ。

    『オオカミの誘惑』(04)第41回百想芸術大賞 映画部門 男性人気賞/第25回青龍映画賞 人気スター賞
    『彼女を信じないでください』(04)第40回百想芸術大賞 映画部門 男性人気賞
    『デュエリスト』(05)第26回青龍映画賞 人気スター賞
    『私たちの幸せな時間』(06)
    『M(エム)』(07)
    『あいつの声』(07)
    『チョン・ウチ 時空道士』(09)
    『義兄弟 SECRET REUNION』(10)
    『超能力者』(10)
    『群盗』(14)
    『世界で一番いとしい君へ』(14)
    『プリースト 悪魔を葬る者』(15)
    『華麗なるリベンジ』(15)
    『隠された時間』(16)
    『MASTER/マスター』(16)
    『ゴールデンスランバー』(18)
    『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)

  • ぺ・ドゥナ

    ぺ・ドゥナ

    (アン・スジン役)

    DOONA BAE (An Soo Jin)

    1979年10月11日、韓国・ソウル特別市生まれ。

    『リング・ウィルス』(99)
    『プライベートレッスン 青い体験』(00)
    『ほえる犬は噛まない』(00)
    『子猫をお願い』(01)
    『頑張れ! グムスン』(02)
    『復讐者に憐れみを』(02)
    『TUBE チューブ』(03)
    『春の日のクマは好きですか?』(03)
    『リンダ リンダ リンダ』(05)
    『グエムル -漢江の怪物-』(06)
    『空気人形』(09)第33回 日本アカデミー賞 優秀主演女優賞
    『クラウド アトラス』(12)
    『ハナ 奇跡の46日間』(12)
    『私の少女』(14)第9回アジア・フィルム・アワード 主演女優賞
    『ジュピター』(15)
    『トンネル 闇に鎖された男』(16)第37回青龍映画賞 人気スター賞
    「秘密の森」(17)
    「最高の離婚 ~Sweet Love~」(18)
    『ペルソナ -仮面の下の素顔-』(19)
    『#Iamhere』(19)
    「キングダム」(19、20)
    「静かなる海」(21)

  • イ・ジウン

    イ・ジウン

    (ムン・ソヨン役)

    LEE JI EUN (Moon So Young)

    1993年5月16日、韓国・ソウル特別市生まれ。
    “IU”というアーティスト名でソロ活動をするシンガーソングライター。韓国では老若男女を問わず絶大な知名度と人気を誇り、“国民の妹”、“K-POPクイーン”、“CM女王”などの異名を持つ。

    「ドリームハイ」(11)
    「キレイな男」(13)
    「最高です!スンシンちゃん」(13)
    「プロデューサー」(15)
    「麗<レイ> ~花萌ゆる8人の皇子たち~」(16)
    「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」(18)
    「ホテルデルーナ ~月明かりの恋人~」(19)
    『ペルソナ -仮面の下の素顔-』(19)
    『Shades of the Heart』(19)

  • イ・ジュヨン

    イ・ジュヨン

    (イ刑事役)

    LEE JOO YOUNG (Lee Eun Joo)

    1992年2月14日、韓国生まれ。

    『春の夢』(16)
    「恋のゴールドメダル ~僕が恋したキム・ボクジュ~」(16)
    『夢のジェーン』(16)
    『蚕を飼っていた部屋』(16)
    「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」(18)
    「私だけに見える探偵」(18)
    『なまず』(18)
    「貧乏な私の家探しプロジェクト」(19)
    『野球少女』(19)第45回ソウル国際映画祭 独立スター賞
    「TIMES ~未来からのSOS~」(20)
    「梨泰院クラス」(20)

DIRECTOR・WRITER・EDITOR/
監督・脚本・編集

是枝裕和

KORE-EDA HIROKAZU

1962年6月6日、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。2014年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げる。主なTV作品に、「しかし・・・」(91/CX/ギャラクシー賞優秀作品賞)、「もう一つの教育~伊那小学校春組の記録~」(91/CX/ATP賞優秀賞)などがある。1995年、『幻の光』で監督デビューし、ヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。2004年の『誰も知らない』では、主演を務めた柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。その他、『ワンダフルライフ』(98)、『花よりもなほ』(06)、『歩いても 歩いても』(08)、『空気人形』(09)、『奇跡』(11)などを手掛ける。

2013年、『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を始め、国内外で多数の賞を受賞。『海街diary』(15)は第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、日本アカデミー賞最優秀作品賞他4冠に輝く。『海よりもまだ深く』(16)が映画祭「ある視点」部門正式出品。『三度目の殺人』(17)は第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品、日本アカデミー賞最優秀作品賞他6冠に輝いた。

2018年、『万引き家族』が、第71回カンヌ国際映画祭で栄えある最高賞のパルムドールを受賞し、第91回アカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされ、第44回セザール賞外国映画賞を獲得。第42回日本アカデミー賞では最優秀賞を最多8部門受賞する。

2019年には、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークらを迎えた初の国際共同製作作品『真実』は日本人監督として初めてヴェネチア国際映画祭コンペティション部門オープニング作品に選定された。

ベイビー・ブローカー BABY BROKER 絶賛上映中