とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは31テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
“30分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮った「フランスの」ヤツらの話。
2018年、監督もキャストも当時はまだ無名にもかかわらず、熱狂的な口コミが日本列島を駆け巡り、観客動員220万人・興行収入32億円を突破し、社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』。
海外でも大ブームとなり、遂に決定したリメイクの発表に、全世界が驚愕!第84回アカデミー賞®作品賞を始め5部門を制した『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウスが監督!『タイピスト!』などで知られるフランスNo.1の人気を誇るロマン・デュリスと、『アーティスト』でアカデミー賞®にノミネートされ、『ある過去の行方』で第66回カンヌ国際映画祭女優賞に輝いたベレニス・べジョが主演!
私たちの愛すべき〈B級カメ止め〉が、オリジナルを深くリスペクトしながら、フレンチのおしゃれな笑いと最先端のアートをきかせた、オスカー仕込みの大感動のエンターテイメントに超進化した!
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは31テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
“30分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮った「フランスの」ヤツらの話。
本作が成功するか否かの最初の分かれ目は、第1部となる30分間にあった。このオープニング映像は、意図をもって「酷い映画」として作られているのだが、初めて見る者には、まだそのからくりは分からない。「本作の土台となっているこのアイディアは、とても複雑で非常に際どい実験のようなものだ」と、ミシェル・アザナヴィシウス監督は指摘する。
果たして観客は、この「出来の悪い映画」を、席を立たずに30分間も見続けることができるのか。その疑問に対して、アザナヴィシウス監督は、「“ハイジャック・コメディ”として成立させるというのは、一つのアイディアだと思った」と振り返る。あらゆるタイプのコメディを取り入れながら、いくつものジャンルの間を行き来しつつ、物語や登場人物を生かすという手法だ。そうすれば、作品が完全なるパロディに落ちぶれることなく、物語をある種の不条理さへと導くことができる。
また、ドタバタ劇ではあるが、俳優たちが決して道化師を演じているわけではないと、観客に感じてもらうことも重要だった。登場人物たちは、自分たちの意志に反する状況に振り回されることによって、滑稽に見えているだけなのだ。アザナヴィシウス監督は、「俳優たちは、この状況をなんとか乗り切って、最大限、物語を伝えようとする。元の企画にしがみつき、障害を乗り越えようと必死になる中、登場人物の間に緊張感や対立が生まれる。そうすれば、観客もただ最悪な映画を見ているという気持ちにはならないはずだ」と説明する。
演出によっても、登場人物たちの対立に火をつけなければならない。すべてがうまくいっていないのにもかかわらず、真実味のある映画に仕上げ、物語を成立させるためにチームが全力を尽くしているのだということを、観客に信じてもらう必要があった。この緊張感こそが、冒頭の30分をもたせるカギだ。アザナヴィシウス監督は、「最初に超低予算映画であることを示した。16ミリフィルムで撮影され、映像も荒いけれど、コントロールはされている。この作品の独特の世界観を表現するために、こういった要素で遊ぶ必要があった」と語る。
第1部は、カット割りなしの長回しで撮影される。つまり、現場の環境に頼る要素が多く、照明を工夫することもできない。アザナヴィシウス監督は、「生々しい映像にするために、色や質感で遊んだ。緊張感を維持するためにも、B級映画の世界観を作り出すことが必須だった」と振り返る。
アザナヴィシウス監督は、日本とフランスの笑いの違いがあらわになった時、壁にぶつかったと打ち明ける。「オリジナル作品の決定的な特徴は、物語が進むペースとその構造だ。細かいところは気にせずに、軽やかな足取りで素早く進んでいく。日本文化の驚く点は、多くのことを敢えて言葉にしないところだね。だからこそ、物語があれだけ素早く展開する。状況が変化しても、登場人物は特にそれに対して何も言及することなく、次の展開へと発展する。しかし、フランスでは、登場人物がやたらしゃべる。変化した状況を説明せずに放置することに、フラストレーションを感じてしまう国民なんだ。つまり、どうすれば物語のペースを崩さずに、変化した状況を極限まで発展させ、それを利用し、対立や登場人物が辱められているおかしな状況から、いろんなものを引き出すことができるか、というのが難題だった」。
最後に、アザナヴィシウス監督は、キャスティングについて、こう語る。「私は、昔ながらのキャスティングのバランスを尊重すべきだと考えていた。2~3人の主役がいて、俳優たちは役柄に合っているという理由でキャスティングされるべきだ。もちろん、著名な俳優も含まれているけれど、いわゆるゲスト出演のような扱いは、なんとしてでも避けたいと考えていた。現代社会の多様性を反映し、出自の異なる俳優を集めるという理想を叶えることができた。また、キャストには、現場で家族のようにお互い接してほしいと思っていた。庶民的であればあるほど、この映画は生きると考えていたからね。その結果、飾らず自惚れのない俳優たちが集まってくれて、よい映画になったと感じているよ」
1974年、フランス、パリ生まれ。1994年にセドリック・クラピッシュ監督の『青春シンドローム』で映画デビュー。クラピッシュ監督とは、『猫が行方不明』(96)、『パリの確率』(99)などのヒット作でもタッグを組む。また、トニー・ガトリフ監督の作品にも多く出演し、『ガッジョ・ディーロ』(97)ではセザール賞有望若手男優賞にノミネートされる。2002年、クラピッシュ監督の『スパニッシュ・アパートメント』が世界的ヒットを記録し、続編の『ロシアン・ドールズ』(05)、第3弾の『ニューヨークの巴里夫』(13)でも主演を務める。2005年、ジャック・オーディアール監督の『真夜中のピアニスト』で、リュミエール賞最優秀男優賞に輝き、作品もセザール賞を獲得するなど、フランス映画において欠かせない俳優となる。その他の出演作は、『モリエール 恋こそ喜劇』(07)、『ハートブレイカー』(10)、『タイピスト!』(12)、『ムード・インディゴ うたかたの日々』(13)、『彼は秘密の女ともだち』(14)など。また、リドリー・スコット監督の『ゲティ家の身代金』(17)などハリウッド大作にも出演し、映画界の第一線で活躍し続けている。
1976年、アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。3歳でフランスに移り住む。1996年、『Les Soeurs Hamlet(原題)』で長編映画デビューを果たし、2001年にヒース・レジャー共演の『ROCK YOU! [ロック・ユー!]』でハリウッドに進出する。その後、私生活でもパートナーであるミシェル・アザナヴィシウス監督の『アーティスト』(11)に出演、世界中を虜にし、セザール賞に輝くと共に、アカデミー賞®、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞など多くの賞にノミネートされる。その他の出演作は、『ブラウン夫人のひめごと』(02)、『タイピスト!』(12)、カンヌ国際映画祭女優賞を受賞し、セザール賞にノミネートされた『ある過去の行方』(13)、『あの日の声を探して』(14)、『エタニティ 永遠の花たちへ』(16)、『グッバイ・ゴダール!』(17)など。
1960年生まれ、大阪府出身。短大卒業後、金融機関店頭営業、裁判所勤務を経て、カルチャースクールで落語を習ったことをきっかけに表現の楽しさに目覚める。2016年、間寛平座長の劇団間座、旗上げ公演「恋の虫」で蛾の役を演じる。その後、2017年、K’sシネマで今泉力哉監督作品『退屈な日々にさよなら』の舞台挨拶を見て感動し、シネマプロジェクトのチラシを持ち帰り応募。『カメラを止めるな!』(17)で映像作品デビュー。以降、間座公演「発明王」人間ロボット役、「クリスマスコメディ」店員役、ドラマ「ルパンの娘1.2」映画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(19)『ルパンの娘』(21)に出演。2022年「還暦のシンデレラガール」初著書出版。現在フリー。
1992年、イタリア、ミラノ生まれ。モデルとしても活躍し、ミュウミュウの2016春夏シーズンビジュアルに、ミリー・ブレイディらと共に登場し、注目される。大ヒット・ホラー『ザ・リング』シリーズの第3弾『ザ・リング/リバース』(17)で主演に抜擢される。『REVENGE リベンジ』(17)でも復讐を果たす女性を演じ、CinEuphoria Awardsベスト・アンサンブル賞にノミネートされるなど高い評価を得る。その他の出演作は、『クラシック・ホラー・ストーリー』(21)など。
2001年、コソボ生まれ。7歳までコソボで過ごした。2011年、『Adèle’s Choice』(未)で8歳のアルバニア人の生徒役でデビュー。その後、TVドラマやショートフィルムに出演、学園ミステリー『スクールズ・アウト』(19)では生徒役のリーダーを演じた。2020年には『The Hill WhereLionesses Roar(原題)』(未)で監督デビューも果たしている。同年、セザール賞有望若手女優賞にノミネート。世界中で話題をさらった『燃ゆる女の肖像』(19)では、使用人のソフィを演じ注目を集める。『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』(19)にも出演。
1976年、フランス生まれ。フランス国立高等演劇学校で学んだのち、コメディアンとしてキャリアをスタートする。以後、役者としても活躍の幅を広げ、『Angèle et Tony(原題)』(10)でセザール賞最優秀新人男優賞を受賞。その後も、『マリー・アントワネットに別れをつげて』(12)や、フランスでブームを巻き起したスリラードラマの「リターンド/RETURNED」(12・TV)に出演。フランス版の「アルジャーノンに花束を」(14・TV)でも主演を務める。その他の出演作は、セザール賞にノミネートされた『マルヴィン、あるいは素晴らしい教育』(17)、『グッバイ・ゴダール!』(17)、『オフィサー・アンド・スパイ』(19)など。
1991年、イギリス生まれ。これまでの出演作に、エヴァ・ユッソン監督の『青い欲動』(15・未)、ベトラン・ボネロ監督の『ノクトラマ 夜行少年たち』(16)、カテル・キレヴェレ監督の『あさがくるまえに』(16)がある。2018年には『マルヴィン、あるいは素晴らしい教育』(17)でセザール賞有望若手男優賞にノミネートされた、注目の俳優。
1967年、フランス、パリ生まれ。1988年に有料テレビチャンネルCanal+でキャリアをスタートさせる。ジャン・デュジャルダンと、私生活のパートナーでもあるベレニス・ベジョが主演したスパイ・パロディ映画『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』(06)が世界各国で大ヒットを記録。再びジャン・デュジャルダンとベレニス・ベジョを主演に迎えた『アーティスト』(11)が、アカデミー賞®5部門受賞を始め世界中の賞を総なめにし、国際的に高く評価される。その後、紛争で荒廃したチェチェンで交差する3人の人生を描いた『あの日の声を探して』(14)を経て、2017年に製作会社Les Compagnons du Cinemaを設立、第1作の『グッバイ・ゴダール!』(17)が、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品される。その他の監督作は、『フレンチ大作戦 灼熱リオ、応答せよ』(09)、オマール・シー、べレニス・ベジョ出演の『The Lost Prince (原題)』(20)など。
1984年滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2010年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。2015年、オムニバス映画『4/猫』の1編『猫まんま』の監督で商業デビュー。妻であるふくだみゆきの監督作『こんぷれっくす×コンプレックス』(15)、『耳かきランデブー』(17)等ではプロデューサーも務めている。『カメラを止めるな!』(17)が劇場用長編デビュー作。主な監督作品に『スペシャルアクターズ』(19)『ポプラン』(20)『100日間生きたワニ』(21)がある。
1961年、フランス、パリ生まれ。現代の映画音楽界を代表する作曲家。『英国王のスピーチ』(10)なとでアカデミー賞®作曲賞に8度ノミネート、『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)と『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)で2度の受賞を果たす。近年では、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)で、ゴールデン・グローブ賞音楽賞と英国アカデミー賞作曲賞にノミネートされる。
『預言者』(09)でセザール賞衣装賞にノミネートされる。主な担当作品は、ロマン・デュリス主演の『真夜中のピアニスト』(05)、『プライスレス 素敵な恋の見つけ方』(06)、『パリ、ただよう花』(11)、マリオン・コティヤール主演の『君と歩く世界』(12)、『パリ13区』(22)など。
上田慎一郎監督 コメント
今回のリメイクは「!?」の連続でした。フランスでリメイク!? 監督はミシェル・アザナヴィシウス!? 主演がロマン・デュリス!? 竹原さんも出るの!?…どんなリメイクになるの!?!?!?
脚本を読むと、また「!?」が連発。新たな登場人物、新たなトラブル、新たな構造…。そうきたか!? と唸りました。
ついに完成品を見ると、これまで以上に「!?」が噴出。本作は、紛れもなく“カメ止めであり”、同時に“カメ止めでないもの”に仕上がっていました。作品内にカメ止めそのものを取りこみつつ、新たにカメ止めを再現する。まさに「カメ止め的」としか言いようのないリメイクになっていました。
驚いたのは自分たちが“やれなかった”ことを“やっていた”ことです。カメ止めにはワンカットで撮りたかったけれど時間や予算の都合で叶わなかった、とある場面がありました。本作ではその場面がワンカットで撮られていたのです。オリジナルから感じ取ってくれたのか…まるで映画を通じて作り手同士がコミニケーションを交わしたような、そんな感覚を受けました。これまた「カメ止め的」としか言いようのない出来事に深く感動しました。