吉田:こんにちは。ここアップリンクでこうやって観た後にお話をさせていただくのはもう3回目なんですが、今日はいよいよ、主演のリリーさんにお越しいただきました。
<拍手>
リリー:こんなカラフルなお部屋でしたっけ、アップリンクって。
吉田:椅子に全部色がついていますよね。座り心地よさそう。
リリー:前の方の人は寝れますよね。……これは、いま映画観終わった方々ですよね。
吉田:そうです。
リリー:でしょうね、ポカンとしてますもんね。
<会場、笑>
リリー:よく聞かれるんですよ。結局あの家族はなんだったんだ、とか、本当は何人なんだ、みたいなことを。友達が観たらまずその質問がくるんですけど、そんなに気になりますかね? だってそんなの気にしてたら、『スター・ウォーズ』とか観たら、この生物はなんですか? ってはじまるじゃないですか。SFなんですからその辺は一回忘れて観ていいんじゃないんですかね。
吉田:今日初めての方ってどのぐらいいらっしゃるんですか?
<会場の半分くらいの手が挙がる>
吉田:3回目以上の方。
<10人以上の手が挙がる>
リリー:なんでそんなに観るんですか!?
<会場、笑>
吉田:じゃあ、6回以上の方。
<5、6人の手が挙がる>
リリー:なんでそんなに観るんですか(驚)!?
<会場、笑>
リリー:ああ、あれか、一番最初に10回券みたいなのを買ったお客さんか。
<会場、笑>
リリー:でもね、こうやってアップリックさんが1日5回くらいかけてくれてるわけですから。俺もいま(ドラマを)撮影していて、何時に終わるかわからないんですが、突然舞台挨拶に行っていいですかって言ってるんです。俺も大八さんも意地になってるんですよ。これは大八さんが『桐島』パターンって自分で呼んでるやつなんですよね。
吉田:そうそう。スタートがいまいちでも、だんだん尻上がりになっていけばいいなあ、って。でも、実際こうやってアップリンクに毎週来ていると、こういうイベントの時だからかもしれないけれど、お客さんがいっぱいで励まされますよね。
リリー:女性のお客さんが多いんですね。
吉田:そうです。わりとそんな感じです。
リリー:だいたいこの類の映画って、蛭子(能収)さんみたいな変な映画好きの人が多い。
吉田:今日、1人じゃなくてお友達と来てらっしゃる方。
<2組程度、手が挙がる>
吉田:わりと1人で来る方が多い。
リリー:この映画を観に行ったって、人に言いにくいんだよね。
吉田:(会場へ)観た人から、面白かったって周りに勧めづらいって話を聞くんですけど、そんな感じですか?
リリー:でもこの映画、何回も観ると見方が変わりますよね。どんな映画でもそうなのかもしれないですけど。
吉田:よく聞くのは、最初は笑って観てたんだけど、2回目は論争シーンが怖かった、3回目は涙が止まらなかった、とか。
リリー:(この映画で)涙が止まらない人は、よほど情緒不安定ですよ。
<会場、爆笑>
吉田:そんなことはない(笑)。最後のほう、リリーさんの一生懸命な姿に打たれるんですよ。まあでも今回は、自分の作った映画のなかでも、観た人の感想のバリエーションが一番多い感じがします。リリーさんは結局、映画館で観れました?
リリー:(観れなかったので)アップリンクに来ようと思って。で、自分が観に来る時に、どうせだったらトークイベントをしたいなって。
吉田:いつ、いつ?
リリー:勝手に来て、勝手にトークできますか? 早く終わったら来たいんですよ。当日でもいいですか?
吉田:当日「行くよ」って呟いて。
リリー:俺、Twitterもブログもやってないんですよ。
吉田:こっちで呟きますよ。今日、何時の回を観るらしい、って。
リリー:マイクとか要らない。この辺でボソボソ喋りますから。
吉田:邪魔かもしれない。上映中?
リリー:副音声いいですね!
<会場、爆笑>
リリー:副音声の回! いいですね。俺と大八さんが、この日はホント、夜中の4時までやってた、とか。
吉田:あとは、黙って観ていたリリーさんが、ポーズが決まるときだけバッて立ち上がったりして。
<会場、爆笑>
リリー:それですべったら、ホントいたたまれない。
吉田:座れよ! とか怒られたりね。
<会場、爆笑>
リリー:有難いですよね。強烈に好いてくれるお客様を見ると安心しますよね。
吉田:ホントにものすごく、狭く深く刺さってる感じがね(自虐)
<会場、笑>
リリー:もともと、監督がこの原作に惚れ込んで20数年ってことで、大八さんの好きなものが詰め込まれた映画ですからね、広く刺さるわけがない。
吉田:ちょっと長い時間をかけて煮詰め過ぎた(笑)
リリー:結晶化しはじめてる。
吉田:でも、毎週こうして続けられるといいですね。
リリー:アップリンク、いつまで回る予定なんですか?
吉田:半年ぐらい(言い切る)。勝手に言ってます。
<大拍手>
吉田:ところでブラッド・ピットのあれ、知ってます? 天気予報。
リリー:ブラッド・ピットが、この映画を観たかのようなことをしてる。
吉田:トランプ(大統領)が「パリ協定」から離脱っていう時に、ブラピが抗議のために、真っ赤になった天気図の前でキャスターみたいに喋るコント。
リリー:かなりあいつ、俺の影響を受けてます。
<会場、爆笑>
リリー:せっかくだから大八さんに、ブラピにDVD送んなよって言った。
吉田:だから、普通に「観てください」って言ってもスルーされそうだから、「パクったな、訴えるぞ!」みたいにね。
リリー:なんでこじれる方向にするんだよ(笑)
<会場、笑>
吉田:そしたら嫌でも観るかなって。
リリー:ブラッド・ピットはこういう映画好きですよ。『キック・アス』とかプロデューサーするくらいなんだから。この映画が刺さるはず。
吉田:ホントにいま手紙を書いてて、リリーさんのイラストつけて送ろうかなって思ってるんですよ。
リリー:今日なんか心臓血管研究所っていうところに行って。
吉田:気になってるんです。どうしたんだろって。
リリー:(腕の絆創膏を見せて)すごくないですか?
吉田:大丈夫?
リリー:(足にも絆創膏)これは別で怪我してるだけ。今日、家の、俺の部屋履きのスリッパをそのまま外に履いて出てきてる。
吉田:オシャレですよね。
リリー:ちょっとオシャレっぽく見えちゃってるのが恥ずかしい。
吉田:血管は何?
リリー:検査があって、今日身体のなかに造影剤を入れてます。だから今日俺の写真撮ったら血管うつりますから。
吉田:(笑)
リリー:同い年ですから。
吉田:ブラピも(僕らと)同じ年です。
リリー:そういうことしたがる年なんですよ。ジョニー・デップもタメですからね。38(さんぱち)組ですから。相撲でいうところの38組。
※ここで会場からの質問を受け付けました。
Q:この映画の音楽がすごく好きなんですが、監督はどんな感じで音楽をオーダーされてるんですか?
吉田:今回の音楽は、渡邊琢磨さんという天才にお願いしたんです。いつもは録音に立ち会ってすごく細かくやるんですけど、琢磨さんの場合は地方に住んでいるので、毎晩1曲ずつメールで送られてくるんですね。で、僕もメールで返す。ほぼメールのやりとりでした。
リリー:重一郎がどんどん(テレビの)スタジオにいろんなものを持ち込んで、ちょっとずつおかしくなってるとこ、あるじゃないですか。音楽があたってみると、すごく(音楽に)助けてもらってるなって。あれ、音楽がなかったらホントにただ気持ち悪いだけですよ。
吉田:音楽の力ですよね。サントラを買っていただくと、ライナーノーツでもう少し詳しく(音楽の製作過程について)語ってるので、もしご興味があれば。
リリー:監督は細かい上に音楽好きだから、相当向こうも疲弊したでしょうね。
吉田:まあ、いろいろ無理は言ったかも(笑)。僕は映画作りのプロセスのなかで音楽作業が一番好きなんですよ。とにかく憧れの音楽と近いところで仕事してると思うだけで幸せだし。あとは、直接僕が作曲したり演奏したりするわけじゃないから、微妙に気持ちが軽いんですよね。
<会場、笑>
Q:『桐島』は静かなのがすごく印象的で、『美しい星』はすごく音楽が気持ちよくて、リリーさんが変なことをやってる時も…
リリー:変なことやれって言われたんです(笑)
吉田:『桐島』の時は極力(音楽を)使わない効果を狙ったけど、今回は自分の今までの映画のなかで一番音楽が多いかもしれない。
リリー:だって、監督はP-MODEL大好きで上京してきましたから、平沢さんの曲が映画で使えるなんて、ね。
吉田:そう、「金星」っていうのは僕がずっと好きだったP-MODELの平沢進さんの曲で、撮影中はそのことをあまり説明してなかったんだけど、ある日リリーさんが「あれ、平沢進でしょ?」って聞いてきて。それから昔聴いていた音楽の話をするようになったというのが自分のなかでは大きかったです。同い年感がさらに強まって、主人公の重一郎がより身近になった。
リリー:演出の仕方とかが、そういうたとえで来るんですよね。(映画のラスト近くの重一郎が)スイッチャーを叩いてるシーンとかは、メールにナインインチネイルズに参加しているちょっと太ったゲイリー・ニューマンのライブ映像のYouTube のURLが貼ってあって、これを参照してくださいって。
吉田:それ、(今日のお客さんに)わかんないですよ(笑)
リリー:その年代にしかわからないたとえで。でも、すごくわかりやすかった。
吉田:まあ、そんな風にしてできた映画です。じゃあ、最後リリーさんから一言。
リリー:え、終わるの!?
吉田:もう次の回が。
リリー:2回やるのこれ!?
吉田:じゃあ、僕らは喋りながら、皆さん出ていただいて(笑)
<会場、笑>
吉田:1回締めましょうか。
リリー:このまま続けて観ようなんて方がいらっしゃるんじゃないの?
<パラパラと手が挙がる>
吉田:あ、何人かいらっしゃいました。
リリー:ジャンキーですよ、あなたがた。
<会場、笑>
吉田:本当に今日は有難うございました。これからもここ、アップリンクで上映が続きますから、毎回同じことを言ってますが、できれば一回観たら今度はお友達を連れて、是非ね。
リリー:そういう締めしてるんだ、いつも。完全マルチ商法じゃないですか!
<会場、爆笑>
吉田:違いますよ!(笑)リリーさんがまとめないから(笑)。どうもありがとうございました。
<会場、拍手>
吉田:こんばんは。お足元の悪いなか、ありがとうございます。今日はですね、今観ていただいたばかりの映画のなかで、橋本愛さんをミスコンに誘うちょっと嫌な感じの大学生、栗田役の藤原季節さんにお越しいただいてます。どうぞ!
<拍手>
藤原:ええと、あれですね。(ハニカミながら、)「広告研究会の栗田です」。
<大拍手>
吉田:「あれですね」って何(笑)?
藤原:正確には、「広告研究会の栗田を演じました藤原季節と申します」ですね。
吉田:あ、台本通りに読んだのか(笑)。
<会場、笑>
吉田:映画が公開されてから、いろいろTwitterとかで評判見るじゃない。そうすると「あの広告研究会の奴むかつく」とか、「ものすごくヤな感じ」みたいな書き込みが多くて、栗田いい感じで嫌われてるなーって。僕もあの役、すごく好きだったから、嬉しいです。あの役を演るってことになった時、なにか準備とかしたんですか?
藤原:モデルになる人物が何人かいたんですよ、オーディションの段階から。実在してる人物だと、僕の知り合いで札幌でミスコンを主催していた奴だったり。あとは映画のなかの登場人物だと、フェイスブックの映画あったじゃないですか、『ソーシャル・ネットワーク』。あれのショーン・パーカーっていうジャスティン・ティンバーレイクが演じた役だったり、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』って映画の、マシュー・マコノヒーが言葉でまくしたてるみたいなところ、自分でリズムを作り出すみたいなところを参考にしてて。あとは、ウーマン・ラッシュアワーに「終電」って漫才があって。女の子と短い時間でワンナイトの関係になるにはどうしたらいいかっていうネタなんですけど、終電に乗せなければいいんだってことで、村本さんが女の子を終電に乗せないためにあらゆる手段を講じて会話を引き伸ばそうとするんです。それをすごい参考にしてます。
吉田:どんな感じなの?
藤原:「わたし、終電あるから」「いや、ちょっとちょっと。いや、ね、タトゥーが入ってる人はなぜ4月から半袖なの?」
<会場、笑>
藤原:とにかく関係ない話題を次々切り出して、会話のリズムを作ろうとするんですよ。
吉田:ああ、そういう人、たまーに見かけますよね。やっぱり、なんでもいいから(会話を)途切れさせないのがポイントなんですか?
藤原:まあ、そうですね(言い切る)。
<会場、爆笑>
藤原:僕はこの映画、4回くらい劇場で観たんですけど、自分の演技ってわかってなくて。この人(=栗田役の自分)は演技がうまいのか、それともうまくないのか……わからないんですよね。
吉田:たぶん、本物が出てると思われてるんじゃない?
<会場、爆笑>
吉田:やっぱり、本物を連れてきたように見えるのが理想ですよね。藤原さん本人が良い感じで消えている。
藤原:……それが今は……転じて悩みでもあるんですよね。役者としての。
吉田:?
藤原:やっぱ、個性だったりとか、自分の色みたいなのが強い役者さんが、結構今、忙しくしてるってのがあるじゃないですか?
吉田:でも、(仕事は)順調なんでしょう?
藤原:順調……に、なってきてる……気がします。やっぱり「美しい星」の反響はあります。どこ行っても言われるようになりました。
吉田:僕も何回か聞かれましたよ、藤原さんのこと。
藤原:僕も感想が気になって、「美しい星 広告研究会」とかで調べてみるんですけど、広告研究会ってもの自体に嫌悪感を抱いている人が多いですよね。恨みがなんか……ネット上で「死すべし」とか書かれてる(笑)。
<会場、爆笑>
吉田:そういえば、この前どこかで聞かれたんですよ。「名刺を出すところがすごくかっこいいんですけど、あれは監督が演出したんですか?」って(笑)。あれは自分で開発したんでしょ?
藤原:はい。実際の名刺入れを現場でその日の朝渡されたんですけど、撮影がはじまるまでの何時間かずっと、その名刺入れをコントロールする訓練をしてました。ちょっと変わった名刺入れだったんですよ。(手まねしながら、)こうやって持って、クッと力をいれるとウィーンって開いていくっていう。
吉田:そうだった。現場で言ってた。この名刺入れ、すごく使いづらいからうまくいかないかも、って。
藤原:はい、言いました(笑)。
吉田:あそこ、最後までワンカットなんですよね。1回4、5分かかるから皆んな消耗するし、そんなに何回もできないんですけど、結構やったよね?
藤原:6、7回やった。
<会場、笑>
吉田: 名刺出すところは、(名刺出すのが)すごく難しそうに見えるから僕も観るたびに毎回「がんばれ!」って思っちゃう。それがお客さんにも伝わってるのが幸せです。って、相当細かい話してるな……。
藤原:「決まった!」っていう感覚は僕もあって。吉田大八監督の演出って、ここ、ここ、ここだけはクリアしてね、っていうようなものが決まってて、それを1個1個クリアしていかないと乗らない、みたいなシステムになってるんですよ(言い切る)。
吉田:そうなんだ(驚)?
藤原:でも、あのシーンが終わった後に一言だけ褒めてもらえて。
吉田:なんて言ったの?
藤原:「1回も落ちなかったね」って。あれが嬉しくて。
吉田:ああ。でも本当に、橋本さんが嫌がってる表情を引き出すために全部のテイクを同じテンションで演ってくれて、使うのは1テイクだけなのに、ありがたかったです。
藤原:あのシーンはスタッフさんたちも緊張感が高まってて。1回、うまくいったカットが、変な光が入った、みたいなことになって撮り直しになったんですよね。で、「変な光が入った」って聞いたんで、僕が「あ、UFOかもしれませんね」って言ったんですけど……誰も笑わない。ああ、これはヤバいなって(笑)。
吉田:曉子が覚醒した後の栗田は、どんどん押されていくじゃないですか。次に顔見た瞬間いきなり最初に謝っちゃうじゃない、「あ、ごめん」って。あれ、完璧だった。強さもリズムも。「この人センスいいな」って思いましたよ。……その「褒められた!」って顔で笑うのやめて(笑)。すごいんですよ、台本の書き込みも。
藤原:(台本を取り出して、)久しぶりに開いてみたら人に見せられないところが多すぎて。
吉田:最後に曉子が妊娠したことを知ったショックを自分の経験に置き換えるとどれくらいか? みたいなの書いてたじゃない。
藤原:「○○○に告白してつきあうことになり、幸福の絶頂だったが、実は妊娠していたことを打ち明けられた男の物語」。自分の妄想とかも書いてあって、この台本落としたらやべえって。原作読んだ感想とか、映画を観た感想とかも書いてたり、あとは、電通とか博報堂の年収とか。
<会場、爆笑>
吉田:調べたの(笑)?
藤原:栗田の原動力は何なのか、と。
※ ここで、会場からの質問を受け付けました。ネタバレを含みますが、1問だけご紹介いたします!
Q:栗田さんて、曉子(橋本愛さん)のことを、美しいと思ってるじゃないですか。あれって恋の感情なんですか? それとも広告研究会のためなんですか?
藤原:広告研究会のためにでも、恋って感情も孕んでなくて、あくまで自分の利益なんですね。彼には野心があるんで。女性に復讐してやるって野心がある(言い切る)。
吉田:ちょっと待って。その野心って何?
<会場、笑>
藤原:栗田って広告研究会のなかでも独立した人間なんですよ。で、先輩から、次、広告研究会はお前だからなって、託されてる。恋愛って感情を持ち込むかどうかは悩んだんだけど、やっぱり基本的には、アナウンサーの娘をミスコンの候補者に入れることで自分にどういう利益がもたらされるかが第一優先になってる。それは広告研究会の利益ではなくて、自分の、個人の利益。
吉田:復讐ってのは?
藤原:栗田には自分が彼女たちを選抜したんだっていう優越感があるんですが、
過去に(そういう女性に)失恋を経験したことがあって、そういう女性たちに言うことを聞いてもらうってことが復讐につながる(言い切る)。
吉田:おもしろいね(笑)。
藤原:書きながら思いつくんですよ。それで名言があって、(台本のメモを読み上げて、)「野心というのは、ある意味復讐に近いところがある」。二重線引いてある。
吉田:それは本かなにかで読んだの?
藤原:自分で考えました。
吉田:自分の言葉を「名言」っていうんだ(笑)。
※ ティーチインの最後に、映画の感想をお聞きしてみました。
藤原:登壇するからには映画の感想言わなきゃならないだろうなって、実は今日、観てたんですよ、端っこの方で。たまたま撮影がなくて、1日「美しい星」の感想を考えてた。でも、感想が出てこないですよね、言語化できない感動があるというか。今日も結局寝ちゃって、ギリギリで目が覚めて。
吉田:映画を観て寝ちゃったの?
藤原:家です、家です。思考が行き詰まると人は寝るんだなって。それぐらい、観るの4回目なんですけど、言語化できないっていうのがある。でも僕、初めて三島の原作を読んだ時も2日くらいうなされました。言葉がバッと夢に出てきちゃって、論理的な思考で頭が埋め尽くされて。映画はその映像化じゃないですか? 初恋の時みたいに、ため息が出るんですよね。原作を読んだ時と残るものが近くて。だから、映像を感覚で受け取って、やばいとかまた観たいとか、そういうのでいいのかなって。
吉田:まあ、でも、そういう映画かもしれないですね。僕自身もいつも一言でまとめようとして、まだ1回もうまくいってない(笑)。
※ここで恒例のじゃんけん大会。「美しい星」の特製ノートに2人のサインを入れて、勝ち抜いた3名さまにプレゼントさせていただきました。
吉田:ここ、UPLINKさんで上映がしばらく続きます。だんだん上映回数も増えて、観やすくなってきました。みなさんのおかげです。周りに「美しい星」を観ていただけそうな方がいたら、宣伝よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。
<大拍手>
藤原:今日はありがとうございました。僕はこの映画は観るたびに好きなシーンが出てくるんですよ。今日好きになったシーンがひとつあって、中嶋朋子さん演じるお母さんがシャンパンを飲むところがあるんですが、あのシャンパンの飲み方、ちょっとすごい。今日それがすごい発見で。
吉田:後ろから話しかけられてむせる、ちょっと、サザエさんっぽいとこ。
藤原:シャンパン飲む前に、まわりをみて、確認してからフッて行くんですけど、そこに主婦としての生活の歴史が見えたんです。そういう発見が観るたびにあるはずなんで、何回でも観ていただけると嬉しいです。よろしくお願いします!
<大拍手>
吉田:こんばんは。今日は有難うございます。公開した後、お客さんと直接話す機会をなるべく持つようにと思っていて。今日は最初、僕だけって言ってたんですけれど、出演者の方が1人、どうしても話したいということでね、今日、来てます。では、お呼びします。……佐々木蔵之介さん、お願いします!
<大拍手>
佐々木:(客席との距離に)近っ!
<会場、笑>
吉田:マイクいらないかもね。舞台とか、これぐらいの広さの劇場でやることってあります?
佐々木: 僕……大好きです。
吉田:毛穴まで見られますよ。
佐々木:セリフ間違えた時、思い切り見られるんですよね。……あの、こういう小さい劇場だと、チケット代って安くなるけれど、逆だと僕はいつも思うんですね。
吉田:確かに! 今日、値段一緒でした?
<会場、笑>
吉田:それで、今ご覧になった映画のなかで結構恐ろしいほうの、黒木という原作のなかでも非常に重要な役を佐々木さんに演っていただいて、あれですよね、原作をお好きだったんですよね?
佐々木:大学生の時に……兄ちゃんに勧められて……読んだんですよね。別に普段三島とか読まないんですけど。
吉田:普段どういうの読むんですか?
佐々木:なんも読まない。
<会場、笑>
吉田:2つにわかれてるんです。「美しい星」は読んでるけどほかの三島は読まないって人と、三島由紀夫は読んでてもこれだけは知らなかったって人に。
佐々木:……前者ですね。
吉田:僕もそうだったんですよ。ひきつけあったんですね(笑)。原作がお好きで読んでいて、自分でたとえば舞台にしたいとか、映像になるなら自分はどの役を演りたいとか、そういう気持ちはなかったんですか?
佐々木:僕はこれで芝居をしたいとか演じたいとは……思ってはなかったですね。なんとなく最後の討論が笑えるなと思って読んでました。まさか自分がその討論に参加するとは。
吉田:あれ結構、セリフ長いじゃないですか。なんか変わったところで練習したんでしょ?
佐々木:(笑)。やっぱあのセリフを……餃子食べながら喋るところもありますし、テレビ局で喋るところもありますし、あれを滞りなくちゃんとお客さんに伝えないといけないし、でも熱が入ってしまうと人間っぽくなる。でもただ平板に演るとあのセリフは多分届いてこないので、そのさじ加減が大事なんだろうなという風に思いながら……(唐突に)明治神宮を歩きながら。
<会場、爆笑>
吉田:何時間も歩いてたんだって。
佐々木:何遍も歩きながら。
吉田:やばいですよね。こんな背の高い人がね、あのセリフですからね。その時会った人がいたらね、ちょっと怖い(笑)。
佐々木:(続ける)あの、自分で今思い出したんですけど……みんな、覚醒していくじゃないですか。僕は実は、覚醒してるシーンがないんです。実は、ずいぶん前に覚醒してるのかもしれない。覚醒して、僕は長いんですよ、たぶん。みんな覚醒して短い。覚醒してずいぶん経てるから(自慢)! 明らかに太陽系でなくて、僕はもう、白鳥座ですからね(自慢)! ぜんっぜん違うステージにいるんですよ(自慢)!
吉田:僕は言ってないですからね。蔵之介さんが自分で白鳥座って決めてるだけですからね(笑)。
佐々木:(続ける)全然ステージが違うところに立ってなければ僕はいけないと思ったから……ずいぶん前に覚醒してるはずなんで……彼らはもう……ひよっこですわ!
<会場、爆笑>
吉田:ほんとに(笑)。
佐々木:さっき僕、久しぶりに台本を……なかなか映画終わってから台本開けることないんですけど、(台本を客席に見せながら)これ、台本なんですけど、僕はね、台本、ものすごく綺麗なんです。なんにも書かないです。
吉田:書き込まなくて覚えられるの?
佐々木:ああもう……明治神宮ですから。
<会場、爆笑>
佐々木:なんの話、してたっけ?……たとえば、あの、面白かったんですけど、亀梨くんが覚醒した時に、「水星人だろ、君は。もう知ってるはずだ。別に目覚めたからといって、触覚が生えたり、全身が銀色になったりしないから安心しろ」
吉田:(客席に)今観たばかりの映画のセリフを生で聴けるなんて贅沢ですよね。
佐々木:(続ける)「超能力が自由に使えるようになるわけでもない」って言うんですね。僕これセリフ言いながら……笑えるなと思ってたんですよ。エイリアンジョークやな、って思って。宇宙人のジョークやなあって。
<会場、爆笑>
佐々木:で、これはっきり、僕は、「超能力が自由に使えるようになるわけでもない」って言ってるんですね。つまり、人間の能力と変わらんと言ってるんですよ! 自分はずっと人間の能力しかないってはっきり僕は、ずっと人間の能力しかないって言ってるんです。今日、気がついた。
吉田:今日!
佐々木:その時はそういう意識はなかったんですよ。
吉田:一雄の思い込みかも知れないけど、覗いてる一雄に対して何かするじゃない?
佐々木:(しばし考えて)あれは……なんでですか?
吉田:今日聞かれても(笑)。撮影中だったら一生懸命答えるけど。今日は答えない。答えたくない(笑)。
<会場、笑>
佐々木:監督はだいたい、撮影中、一生懸命その場しのぎで答えてくれますけど(笑)。
<会場、笑>
佐々木:たとえば朋ちゃん(中嶋朋子さん)になんか言うてる時もね。(台本をめくりながら)水のパーティーのところで、朋ちゃんと異様な距離で話をしている、監督、こう、目寄ってませんか? この宇宙人、目寄ってませんか? ってとこですね。
<会場、爆笑>
佐々木:(台本を読み上げて)「『もし間違いだったらごめんなさい。ニュースエクスプレスの大杉さんの奥さんですね。(中略)やはり、地球は水の惑星ですからね。地球が美しいとすれば、水が美しいからです。そして、美しい水の中には微生物が存在しません』 黒木と伊余子、ほとんど触れそうなくらいに顔が接近している。魅入られたように動けない伊余子」。僕は当然、ここでカット割るやろと思っとったんですよ。ほとんど触れそうなくらいな顔のところで。でも監督は一連で演ってくださいって。だからこうしゃべりながら。(と、ものすごく大変そうな中腰のパフォーマンス!)
<会場、爆笑>
吉田:(笑)。そうでした。ぷるぷる震えてるの(笑)。
佐々木:僕、大変だったの。あのセリフのあのシーン。瞬きしたらいけないし。それは自分で勝手に決めてたんですけど。
吉田: そうそう(笑)。
佐々木:で、その時に監督がね、言いました。ここ、眉間のここから、ガーってセリフを言ってくださいって。で、僕が「ガーってどういうことですか?」って聞いたら、「いや、聞かないでください」って。僕が笑ったら、「笑わないでください」って。
<会場、爆笑>
吉田:そうでしたか(笑)。よく覚えてますね。
佐々木:役者はずっと覚えています。
吉田:僕は言ったこと覚えてない(笑)。その場でなんかほら、なにか言いたいことあるけど言葉にできない類のことをお願いするから……言い訳ですかね(笑)。でもやっぱ、そういうことが伝わる俳優さんとやると、より高みをめざせるというか深いところまで届くというか。蔵之介さんとははじめてでしたが、うまくいきましたよね?
佐々木:はい。無理難題が楽しかった。「うそやろー」ってことが。
吉田:そういうことを喜びとしてくれる俳優さんが僕はすごく好きで、現場が楽しい。
佐々木:自分が演りやすいということは、やっぱり役を自分に近づけていくんで。で、(今回)宇宙人に近づいていくってことは、やっぱ出来ないことをやっていかないといけないんで、無理やり格闘してたんですが、この映画ならではの、この映画だからこその冒険というかチャレンジができたと思いますね。
吉田:宇宙人って言ってないんですけどね。
佐々木:一回僕は質問したんです。「僕は宇宙人ですか?」って。そしたら、「宇宙人だと思ってる人と思ってください」って。
吉田:その答えで話が終わるところがいいじゃないですか(笑)。
※ ここで会場からの質問を受け付け。最高13回観た方からの質問など、映画の解釈に関わる深く鋭い質問が多数出ました!
※ その後佐々木さんの発案で、撮影時エキストラに協力いただいた方へお渡ししていた「美しい星」ノートにお2人がサインをいれ、会場のお客様お2人にプレゼント。じゃんけん大会を見事勝ち抜いたお客様のところへ佐々木さん自らがお届けにゆくなど会場からどよめきが!
吉田:今日は本当に有難うございました。まだまだ上映は続きますので、周りのお友達にぜひ声をかけていただいてね。よろしくお願いします。今日は本当に有難うございました。
佐々木:この映画は……人に勧めようと思って、どんな風に面白いの? って聞かれて、どう答えたらいいかわからない。そういう時は、逆に、「質問の意味ではなく、質問されたことの意味だよ! 考えろ!」と。
<会場、爆笑>
佐々木:「質問の意味ではなく、質問されたことの意味だよ! だからまず観よう! で、考えて」と言って勧めてください。有難うございました。
<大拍手>
5月26日(金)に公開初日を迎えたことを記念し、5月27日(土)、主演のリリー・フランキーさん、亀梨和也さん、橋本愛さん、中嶋朋子さん、佐々木蔵之介さん、そして吉田大八監督が揃い、舞台挨拶を行いました。 客席には、別の場所でも舞台挨拶を行ってきたキャストを追いかけて作品を鑑賞していたお客様もいらっしゃり、リリーさんから「あちらのお客さんは先ほどの舞台挨拶にもいましたよね。皆さん移動のスピードが凄いですね、何なら宇宙人役で出られましたね」と客席とのやりとりもありながらの和気藹々のスタート。金星人役を演じた橋本さんの挨拶では、お客様からの「愛ちゃん!」という声援に、リリーさんが「あのお客様も3回目ですね、また言うぞと思って見てました(笑)」、橋本さんが「ありがとうございます」と応える一幕も。また、佐々木さんの挨拶の番になると、先ほどリリーさんに声をかけられたお客様から「愛ちゃん!」に続き「蔵ちゃん!」の大きな声援も飛び、リリーさんから「あの人どんどん声が出てきてますね」とツッコみが入り、会場は再び笑いの渦に包まれました。謎の宇宙人役を演じた佐々木さんは「25年前に原作を読み強烈に面白い作品だと感じました。ハイブロウなエンタテイメント作品だと思いますので皆さんに観て頂き感無量です!」と原作ファンだからこその喜びを噛み締め、吉田監督も「何かを感じて集まったここにいる仲間たちと、原作や映画に興味を持ってくださったお客様たちとこの門出を共にすることができて嬉しいです」と語りました。 本作で主演を務め、素敵な家族のお父さん役を演じたことに対しリリーさんは「冒頭のシーンでは、美男美女の息子と娘がいて気の良いお母さんがいるが家族として冷え切っている。そういうのが何かリアルな感じだと思います。でも宇宙人として覚醒してから理想の家族になっていく皮肉が面白かったですね。普段はホームレスや殺人鬼の役が多いのですが(笑)、本作は天気予報士で火星人で不倫してて…と情報が多すぎるので逆に役作りせずフラットに臨むことができました。監督に火星人はこうですから、なんて言えないですしね(笑)」と役作りについて話しました。 作中ではそれぞれのキャラクターが使命に目覚めていきますが、亀梨さんは使命を感じているか、と聞かれ、「一つは仕事ですね、グループ活動を行っているのでそれを潤すことです。役者としてはどういう役をやりたいとかではなく、めぐり合わせで、頂いた機会をどう返していくかしっかり向き合っていきたいなと思ってます。普段はジャニーズ感強めで生きてるので、作品によって強めたり弱めたり出来たらいいなと意識しています。本作は監督に身を委ねて演じさせていただきました」 美を正す、という使命を受けた暁子を演じた橋本さんは「自分の美に誇りを持つところは努力しましたが、暁子のお父さんに対する接し方や好きな人に対して狂信的なところは、年頃の女の子にはある部分だと思うので共感できました」リリーさんはそんな橋本さんについて「愛ちゃんは本当に神秘的な雰囲気を持ってる女優さんですが、髪を切ってさらにその神秘的なところが増して、もうUFO呼べそうですね(笑)衣装も神秘的ですしね」とコメント。 亀梨さんが「本作では牛が出てくるので現場には牛が2頭いたんですが、橋本さんは牛にびっくりするくらい興奮してましたね」と撮影エピソードを明かすと、橋本さんは「人間より大きい動物ってかわいくないですか!?」と発言。他のゲストたちからのツッコミを受け、会場からも笑い声があがっていました。 家族が宇宙人に覚醒するところを見ていた母・伊余子役の中嶋さんは「お母さんとして、腑に落とさずスルーしてました」と話すと、監督は「(伊余子の設定は)原作と違う部分で、宇宙人ばかりでなく、お客様とつなぐ基準がないと、と思って作った役柄でしたが、中嶋さんを見て正解だと思いましたね」と語りました。 人間離れした役を演じた佐々木さんは、役作りについて「星が付いてる服やコンバース、ジミーチュウなど星の物を身に着け、少しでも宇宙人役に近づければいいなと思っていました。台本にも星が描かれていたし、配給にも星のマークがありますしね(笑)まずは目に見えるものから入っていきました。演じるにあたっては、監督から「もっとばーッ!と言ってください」と指示を受け、「ばーッ!って何ですか?」と聞くと、「分からないからそこは聞かないで下さい」と言われ…。本当に難しかったです(笑)」と苦笑。 そんな個性的なキャストとの仕事に吉田監督は「撮影はずいぶん前になりますが、先月イベントで会い、そして今日も会って気持ちよく一緒に過ごせて波長が合ってすごく楽しいです。ずっと一緒にいたみたいです。この5人も牛も引き寄せることができる何かが、僕にはあるのかもしれませんね(笑)本当に楽しかったです」と喜びを語りました。 写真撮影が終わった後、リリーさんが一言「フォトセッションでも火星人ポーズをしましたが、劇中でもこれが印象的なシーンのため皆さんにご迷惑をおかけしました(笑)本作は面白くてかっこいいので、友達におもしろい映画あるよって言いやすい作品だと思います。どんな作品なのかは説明しにくいと思いますが!(笑)」 続いて吉田監督が「公開を迎えめでたい日に、先ほどのポーズを含め楽しい時間を過ごすことが出来、本当に嬉しいです。どんな作品かは説明しにくいかもしれませんが、とにかく観て!と周りに言って頂けたらと思います。今日はありがとうございました」 拍手で退場する中、リリーさんからは「佐々木さんは本作に登場する牛はCGだと思っていたらしいです」という暴露もあり、笑いが絶えないイベントとなりました。
5月24日(水)、明治大学文学部文芸メディア専攻准教授・伊藤氏貴先生にご協力いただき、学生に向けた特別授業として〝三島由紀夫と映画「美しい星」“ を実施いただきました!当日はスペシャルゲストとして、吉田大八監督、そしてサプライズでキャストのリリー・フランキーさん、亀梨和也さんが登場しました。
今回のキャストの登壇は学生の皆さんにはサプライズ。まずはいつも通りに授業がスタートし、先生の呼び込みでまずは吉田大八監督が登場。続いて、生徒にはサプライズとなるリリー・フランキーさんと亀梨和也さんが登場!会場は突然のことに状況を理解できずにいましたが、ようやく状況を理解すると、驚きの声と歓声が沸き上がり、リリーは「よかった、サプライズとか言っといて、亀梨くんがいなかったら、このひょ~っていうのなかったよね(笑)」という一言もありサプライズは大成功!
リリーから、「みなさんの大事な授業の時間をだまして宣伝に使わせていただくという・・・。(亀梨「いやだましてない!(笑)」)こっそりくるとだましてる感があるよね(笑)」と、いつものリリー節でひとこと。一方亀梨は「(学生さんたちの前だと)緊張しますね!」と、いつもと違った雰囲気に少し緊張気味の様子。まずは三島由紀夫を長く研究している伊藤先生より、「小説から現代的にアップデートされ、非常に面白かった」と映画についての感想があり、進行を進めようとすると、「先生、国際弁護士みたいですね。普段の大学の授業はどうなんですか?」と主導権を握ろうとするリリーに伊藤先生もあたふた。学生さんたちもその軽快なトーク術に、教室のあちこちから笑い声が聞こえました。授業を受けている学生の皆さんはすでに映画を鑑賞しており、ここからは伊藤先生が映画と原作の両面から、監督とキャストに質問していきました。まずは吉田監督が、三島由紀夫の小説との出会いを聞かれると、「『美しい星』は大学3、4年のときに読みました」とコメント。リリーは「美大だったので、三島由紀夫は作家というよりポップスターとして人気がありましたね。写真集を出していたり、うちの学校では太宰より人気がありました。男前だったしね」と、作家として以外の三島由紀夫の魅力についても言及。この小説が描かれた1962年当時、純文学の作家が宇宙人という存在を描くのは非常に画期的だったということについて聞かれると、吉田監督は「よく考えると、スピルバーグとかスターウォーズもない時代にUFOをイメージすることはキワモノ扱いされるとわかっていて書いたという。当時からぎりぎりのところを攻めるのはすごい」と一言。
三島由紀夫自身もUFOを探しに行っていて、今活躍されている気象予報士の方のお父様と一緒に探しに行ったことがある、というエピソードもあり、伊藤先生から「亀梨さん、その方がどなたかわかりますか?」と質問されると、「石原慎太郎さんですよね!」と答えた亀梨は、本作のために三島由紀夫についてしっかりお勉強した成果がでて一安心。リリーは「当時UFOってそれぐらいモダンなものだったんですよね。」と、「美しい星」という作品が当時どれだけセンセーショナルな作品だったかを振り返りました。今回映画化したものを実際に三島に見せたらどんな反応があると思うか、と聞かれた吉田監督は「振り切ってチャレンジしたので、この姿勢だけは評価してもらいたいですね。忠実に、というよりむしろ精神の部分に出来るだけ近づくということを意識したので、そこを観てもらえると嬉しいです」と控えめにこの映画に対する自信をのぞかせました。一方リリーは「絶対に面白いって言ってくれると思う。三島が亡くなってからできた三島的なポップアートっていうものをそのままやっていくのではなく、ちょっと色々ミックスして新しいものに生まれ変わらせるというのが面白いと思う」と本作に対して強い自信をみせた。伊藤先生も「戯曲ではないのにこんな風に映像化してもらえて、絶対に喜んでもらえていると思う」と本作に太鼓判。そして「今回、原作を読んでいない人にも映画を観てもらえたのは非常に嬉しい。映画が面白くないと思った人は、三島由紀夫のせいだと思ってください!(笑)」と随所に軽妙なトークをいれ会場を飽きさせないリリー。学生の皆さんも、原作と映画の違いについてとても興味深そうに聞いていました。
ここからは、学生の皆さんからの質疑応答のコーナーに移り、演技の上で気を付けた点を聞かれると、「しゃべり方の音、目線ひとつひとつ細かく演出があったので、そこは徹底的についていけるようにしました。日常劇の中で、セリフのイントネーションではなく、『音』にこだわることはなかなかないので、そのおかげでより精度をあげたキャラクター作りが出来たと思う」と、普段とは違った役作りに新鮮な印象をもった様子の亀梨。対してリリーは「地球人だったときと宇宙人に覚醒した時の、家族のあり方の描き方にすごく皮肉が効いていた。役作りというよりは監督の細かい演出に委ねたという感じ。物語の中で、小難しいことを書くのではなく、点と丸をきちんとつけるということをすごく意識しているように感じましたね」とコメント。亀梨も「監督の中に強く存在しているものを感じたので、その繊細な演出に身をゆだねられるような圧倒的な信頼がありました」と監督に対する印象を語ると、監督も二人について「今回せっかくこのお二人とご一緒できるということで、自分の中のものだけでなく、一緒にやっていく中でどんどん広がっていくことで指示も多くなっていったが、とても楽しかったです。お二人は大変だったと思うけど(笑)」と、この座組のチームワークの良さを感じさせました。
学生からの質問が続き、自分の将来について決められずに悩む学生の質問に対して監督は「僕は偶然映画を撮ることになり、それが褒められたのが嬉しくて、それが今まで続いているという感じ。自分が感じた手ごたえを今でも忘れないようにしてます」とコメント。リリーは「小学生のときには野球選手になりたいと言っていましたが、まだ自分が何になりたいかなんてわからないです(笑) 今でも、『大人になったらこうなりたい』という風に思いますし、今だって普段は家でおでんのイラスト書いたりしてるんで(笑)何かになりたい、とか決めなくても、おいおいでいいんじゃないのかな? 色んなものをみて人生は全部つながっているということを知っていけばいいと思うよ」とリリーらしいアドバイス。亀梨も「ジャニーさんに『YOUジャニーズで野球やっちゃいなよ』と言われ、思わず入りましたが、今まで続いています。巡り合わせで出会ったものに対して一つ一つ、どれだけ向き合えるか、というのが大事かなと思いますし、絶対にこうなりたい、という風には思わないけど、その時その瞬間のこうあるべきだ、というのを大切に、楽しんで全うしていって何年後かに振り返った時に『亀梨ってこういうやつだな』って分かればいいかなと。そうすることで今の自分が出来ていると思う」と熱くアドバイス。学生の皆さんも熱心に聞いていました。
締めの一言では「若い世代の人と話して、いろんな発見があり楽しかったです!ありがとうございました」と監督。亀梨も「最初は難しそうだなと思っていましたが、出来上がった作品を観て、映像も音楽も含めてすごくイケてるな、と思えた。三島ということで構えずに観て頂ければ、何か持ち帰って頂けるものがあると思います」と一言。最後にリリーが「構えて見られがちだけど、これを見て三島を面白い、読みたいと思ってもらえるようになっていくべきだと思う。これが古いものを広げて、文学を面白いと気づいてもらうキッカケになれば良いと思いますね」というコメントで締め、ゲストの皆さんは学生の皆さんの拍手に包まれて教室を後にしました。今回はいつもとは違った特別な授業ということで、キャストと監督だけでなく、学生の皆さんにとっても素晴らしい時間を過ごしていただけました。
4月24日(月)、主演のリリー・フランキーさんをはじめ、亀梨和也さん、橋本愛さん、中嶋朋子さん、佐々木蔵之介さん、そして
吉田大八監督登壇の完成披露試写会を行いました。
「火星人役を演じさせていただきました」というリリーさんの挨拶に続き、登壇者全員が演じた星人を言うという今までにない変わった挨拶に会場のお客さんからは思わず笑みが。
さらにリリーさんは亀梨さんの舞台挨拶の衣装に対し、「今日はパジャマで来たの?」といじるなど、和気あいあいとした雰囲気で舞台挨拶はスタートしました。
吉田大八監督は、30年越しの悲願で映画化がかなったことに対し、「苦労を感じたことがないくらい幸せな時間でした」と喜びを語りました。
主役を演じたリリー・フランキーさんは、「僕はお天気キャスターで、火星人で、不倫もしている役です。本当にお母さんすみません…(笑) 現場では、専門用語のセリフがたくさんありましたね。撮影中、天気予報の解説をするシーンで(監督が)「泣け」っていうんですよ!なかなか情緒不安定な人ですよね(笑)地球人と火星人の演じ分けは大変でした」と撮影現場を振り返りました。
監督とのエピソードを聞かれると、亀梨さんは「とにかく監督に身をゆだねました」と話し、橋本さんは「(現場に)入る前、監督から『暁子の存在をもって美を正してほしい』と言われて。ということは、私は絶対に美しくなければいけない、という重圧があったので“自分は絶対に美しい”という自己暗示をかけ続けました」
一方、中嶋さんは「役は難しかったですが、面白かったです。おかんはおかんなんで、息子、娘、お父さんって否応なくみてるその図太さが大事だったなと思います」
それに対し、リリーさんも「皆さんも観ていただけたら、おかんの宇宙が一番でかいってことだけはわかると思います!」とコメント。
佐々木さんは、「(現場で)セリフを言うと、監督から『今のは日本語みたいに聞こえました』って言われて…(笑) 結構議論しましたね」
リリーさんは「そのくだりを傍で見ていたんです。佐々木さんのセリフに対して、今度は監督が『今のはちょっと宇宙人すぎますね』って…さじ加減がわからないんですよね(笑)」と監督の独特のこだわりと演出法を暴露してくれました。
父としてのリリーさんについて聞かれた亀梨さんは「僕は唯一、家にいるシーンがないんです。家族でいたのは3、4日ですかね?」というコメントに対し、リリーさんは「一雄が家に帰ってこないからねぇ…(笑)」すると亀梨さんは「すみません、プレイボーイなもんで…(笑)」と返して笑いを誘い、「もしリリーさんが父親だったら、すごく楽しい息子生活が送れるだろうなぁと思いました!現場でもリリーさんはすごく自然体で、ナチュラルな空気感を出してくれていました。控室でも家族のみんなで固まっていましたよね」とコメント。
最後に、監督は「こんな素晴らしいみんなと良い映画を作ったので、観てください。」
リリーさんは「文芸作品がこんなに面白く仕上がって、本当にたくさんの人、特に若い方に見てもらいたい。良い作品に呼んでもらえて、幸せな経験が出来ました。そういえば、撮影中のことを聞かれても、ほとんど辛くて覚えてないんですよ(笑)これは吉田大八っていう宇宙人に一回アブダクションされて、記憶を消されてまた戻されたのかなと!(笑)」と最後まで会場の笑いを誘いました。
最後は映画の大ヒットを祈願し、全員で火星人のポーズを披露!大盛況の中、イベントは終了しました。