『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』の誕生 ― 監督の想い
本作が誕生した背景を、監督クリス・バトラーはこう語る。「子供の頃に観た『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』は私に大きな影響を与えた。あの歴史と神話の見事な融合、アクション、ドラマ、ロマンス、そしてコメディまで、幅広いジャンルを駆け巡る魅力的な登場人物たち―私は、アニメの世界にもあのようなヒーローが必要だと思った。どこかインディ・ジョーンズのようで、シャーロック・ホームズのようでもある存在。情熱的で風変り、そして目的のために何でも乗り越える人。そう考えるうちに、ライオネル卿が誕生した。そこから彼と対照的なキャラクター、Mr.リンクが生まれたんだ」。そして、インディ・ジョーンズという考古学者からインスピレーションを得て、ストップモーション・アニメ業界初の“未確認生物学者の物語”の創作が始まった。本作は、ライカ作品の中でも最も野心的な作品であり、かつてないほど繊細にキャラクターや脚本が磨き上げられている。「魅力的なキャラクターたちの感動の物語が中核にあって、その上にすごく刺激的なアドベンチャーとコメディの要素を盛り込んだ。派手なアクションやモンスターも登場するし、これはアニメーションで伝えるのにぴったりな物語だった」と、製作のトラヴィス・ナイトは語る。
驚愕のストップモーション技法 ― “ハイブリッド”の創造
“ストップモーション・アニメ”は、対象物を小刻みに操作して、個々にコマ撮りを行うことで、連続して再生したときに対象物が動いているように見せる撮影法だ。映画の世界で最初に使われた、最古の「特殊効果」でもある。ライカでは、1秒毎に24枚のポーズをアニメーターが創作している。制作スタッフのブライアン・マクレーンは言う、「ライカはストップモーションという、100年前からある技術を蘇らせたけど、それを大胆にも最先端技術と融合させて、CG要素が入ったハイブリッド映画を作ったんだ」。ライカは創設以来、3Dプリンターやモーション・キャプチャー、CGなどあらゆるテクノロジーを積極的に導入してきた。「できることは何でもしたい。必要なものは全て揃っている」と監督は語る。ライカは3Dプリンター製の顔パーツを駆使した技術に定評があり、2016年にはアカデミー賞®科学技術賞を受賞した。本作では、すべてのパペットにフルカラー樹脂の顔パーツが使用されている。「過去からの遺産」と「未来の技術」の相互作用によって、ライカのユニークな作品は創造されるのである。
豪華キャストの共演 ― 躍動するキャラクター
主人公のライオネル卿には、監督がキャラクター・スケッチの段階からヒュー・ジャックマンをイメージしていたという。自信あふれる野心家だが、周囲から認められない寂しさを抱えているライオネル卿の役作りについて、ヒューは「ライカのスタジオでライオネル卿のデザインと衣装を見たのがすごく参考になった。彼は勇敢なだけじゃなくて、おちゃらけた面もある。Mr.リンクとのかけ合いでは、奇妙なコンビっていう設定の面白さを生かせるよう意識したよ」と話す。Mr.リンク役のザック・ガリフィアナキスは、「“生きる化石”のMr.リンクは、トボけたところもあるが純粋でお人好し。森の外に出る決意をした彼の芯の強さを大切に演じたんだ」。ライオネル卿の亡き友人の妻アデリーナを演じたゾーイ・サルダナは、「堅実でたくましい彼女は、夫の死により自分の生き方に疑問を持ち始めたの。二人と冒険に出たアデリーナは自分らしさを取り戻していくのよ」と語る。俳優陣の洞察力を絶賛する監督は、「自分が何年も温めてきた台詞に新鮮な解釈を与えてくれる彼らと仕事ができて、とてもワクワクしたよ」と喜びを隠さない。