迎えた最後の夏。
ポルトガルの世界遺産シントラの町を舞台に、
女優フランキーが仕組んだ〈家族劇〉とは−。
フランキー
夏の終わり。シントラのホテルのプールで、水着を脱いで泳ぐフランキー。義理の孫が「人に見られるよ!」と注意を促すが、「私はフォトジェニックなの」と気にしない。彼女はヨーロッパを代表する女優であり、自身の余命があと僅かだと知っている。
それぞれの人生
ポルトガルの避暑地、シントラ。深い森と美しい海に恵まれ、歴史ある城跡が点在する世界遺産にも認定された神秘的な町。女優フランキー(イザベル・ユペール)は、この地に家族や友人を呼び寄せる。夫、かつての夫、息子、義理の娘の家族、さらには最も信頼し、愛する年下の友人。何気ない夏の終わりの休暇の様相を呈していたが、実は自らの余命が長くないと知るフランキーが、最愛の者たちの人生を今のうちに少しだけ演出しようと仕組んだ集まりだった。しかし、集められた家族達は、この旅がそれぞれの人生のターニングポイントとなることなど、その時誰も想像だにしていない。
アイリーン(マリサ・トメイ)はニューヨークを拠点にする映画のヘアメイクアップアーティスト。フランキーの信頼も厚く、彼女の仕事関係で唯一の友人と言える存在だ。フランキーの誘いを受け、恋人で映画の撮影監督でもあるゲイリー(グレッグ・キニア)とこの地を訪れるが、フランキーにとってゲイリーは、なにか軽く、底が浅い男に思える。大切なアイリーンのパートナーとして、ふさわしくないと直感が囁くのだ。そして何より、ニューヨークへの移住が決まっているものの、どこか情けないフランキーの息子ポール(ジェレミー・レニエ)と彼女が結ばれることを強く望んでいた。アイリーンは到着早々にゲイリーからプロポーズを受けるが、その性急な申し出にどうも気持ちが付いて行かない。一方、母からアイリーンを暗に勧められたポールも、母の敷いたレールの上を進むような人生に抵抗を感じている。
義理の娘シルヴィア(ヴィネット・ロビンソン)は結婚生活に問題を抱えていた。夫と一人娘の3人家族でこの旅にやってきたが、彼女は夫との離婚を望んでおり、この休暇中にも娘と2人で暮らせるアパートを隠れて探し続けている。娘のマヤは思春期で、両親の不仲に敏感に反応し、シルヴィアを追い詰めてくる。今回もいつも通り母と衝突したマヤは、ひとり“リンゴの浜”へと向かい、そこで同年代の少年と出会う。両親が離婚しているという彼との会話は、マヤの心になにか温かいものを残すのだった。
フランキーの夫ジミー(ブレンダン・グリーソン)は、その日の朝、目を腫らしていることを、朝食を買いに立ち寄ったパン屋のマダムに指摘される。アレルギーだと取り繕ったが、本当は違う。最愛のフランキーとの出会いは鮮烈で、彼女からのアプローチで結婚生活が始まった。フランキーはジミーの前に、この旅行にも参加しているミシェル(パスカル・グレゴリー)と結婚していたが離婚。彼女と離婚した後に、自らがゲイだと気付いたミシェルはジミーに忠告する。「フランキーの後は、物事が変わる。人生が変わるんだ。」
最後の物語
眼下に海を臨む神聖なペニーニャの山。夕刻に山頂に集まるようフランキーから言われていた家族や友人が、初めて一堂に会する。燃えるような夕陽に照らされる、ユーラシア大陸の西の果ての広大な海を全員で眺めながら、やがてフランキーはあることに気付くが―。