是枝作品恒例のティーチインイベントですが、今回の観客は日本人の他に、日本在住の外国人の方たち!
既に4回目の鑑賞だというコアファンから是枝作品を鑑賞したのは今作が初めてというビギナーファンまで来場し、様々な質問が飛び交いました。
イベント最後には、本作で“家族”を演じた、リリー・フランキーさん、安藤サクラさん他6名と是枝監督のLINEグループの存在を明かし、
その中でのやりとりについても明かすなどして、会場を盛り上げました、
以下詳細レポート▼※敬称略
■最初の挨拶
是枝監督「デビュー作からこういったティーチインイベントを実施しています。楽しいから続けていて、本当は何回もやりたいんだけど、明日から上海で今週からフランスに行ってしまう為、今作ではこの一回限りになってしまいそうです。でもロングランヒットになると、夏にまたやれるんですけど(笑)」
<ご来場のお客様とのティーチイン>
Q,家族6人が、縁側で見えない花火を見上げるシーンがとても好きです。
6人全員がフレーム内に収まっているのはあのシーンだけかと思ったのですが、その理由を教えてください。
是枝監督「全くないわけではないんだけど、6人全員をフレーム内に収めるのはあのシーンだけにしようと思っていました。でも、あのシーンは最初からあったわけではなくて、ロケハンでこの家を見つけたときに、ここからじゃ花火は見えないよね、という話をスタッフとしていて、面白いなと思って書き加えました。」
Q,国内、海外の観客で反応の違いはありますか?また、“家族“とはなんだと考えますか?
是枝監督「反応の違いは、国内、海外共に違いは感じません。もっとドメスティックな、いわゆる日本的な作品であるといえる『誰も知らない』や『海よりもまだ深く』のときでも、何かしら齟齬はあるけど、軸は同じだと思っているので、国は関係なく、そういったものは越えられると確信をもってつくっています。
“家族”とは何かということについては、そういうことを知る為に映画をつくっているわけではないんです。そういった問いについては、登場人物が手探りで探しています。例えば、『そして父になる』では、家族を繋ぐのは血か時間かという二者択一を主人公に課しているけど、どちらが大切かということを示したいわけではありません。今回はむしろ、共に過ごす時間が終わったとき、記憶として残っているものが、“家族”というものなのかなと。離れても見えない形で“家族”という意味が浮き上がってくる。今回はそういう話にしたくて書きました。」
Q,初めからストーリーは決めてつくっていますか?
是枝監督「つくっている過程で新たに作り上げていくストーリーというのが一番面白いと思っています。今回も最初に書いていたはなしとだいぶ違うんです。撮影中、(安藤)サクラさんから「リリーさん演じる治は“とうちゃん”と呼ばれることを切望しているけど、私が演じる信代はどう思っているんでしょうか?」と相談されたんですけど、そのときはその問いかけに対して、曖昧な返事をしていたんです。だけど、後から面白いと思って、そのシーンを付け加えたり、台詞を変えたりしました。キャストやスタッフは大変だと思うけど(笑)、そうやって映画をつくるのは楽しいし、それでいいシーンが撮れたときは幸せに感じます。」
Q,役者のどういったところみて、配役を決めるのでしょうか?
是枝監督「普段はあまり別の作品をみて決めるということはほぼないんですが、今回、松岡さんだけは彼女の出演しているドラマや映画をみて、素晴らしい女優さんだと思ったので参加してもらいました。この場に来る前に、フランス映画祭に呼んでいただき、開会式で挨拶をさせていただいたんですけど、映画祭のフェスティバルミューズを務められている、女優の常盤貴子さんもその場にいらっしゃったんです。彼女の役割は、同じくミューズを務められている仏女優のナタリー・バイさんの挨拶を日本語で挨拶するというものだったんですが、通訳の方が、ナタリーさんの挨拶を訳してしまって、彼女の役目がなくなってしまったんですね(笑)。そのときに、とても美しい着物でビシっとキメた常盤さんが、大きな口を開けて大笑いしたんです。そういうとこをみると、こういう笑い方をする役を書いたりする。そういった、そのひと自身の何かが垣間見えたときに、書きたいという欲が出たりします。」
夜遅くのイベントだった為、「多分、観終わった後に、カップ麺にコロッケを乗せて食べたいという方もいらっしゃると思うので、この辺で終わりにさせていただきます(笑)」といい、この場を名残惜しむ様子をみせた是枝監督は、終わりの挨拶として「またチャンスがあれば、こういったティーチインをやりたいと思っています。日本をしばらく離れますが、僕の新しいチャレンジがもうすぐ発表できるかと思いますので、是非ご期待ください」とコメント。
また、6月21日は佐々木みゆちゃんの誕生日ということで、監督と本作の家族6名のLINEグループでお祝いの言葉などが飛び交っていたそうで、是枝監督は「撮影が終わって、公開記念の舞台挨拶が終わると、この“家族”がバラバラになっちゃうのが寂しいね、と話していたんです。でも、チャンスがあればまた集まりたいと思いますし、離れていると寂しく感じたりするのは、本当の家族のようだなと思っていて。これからも、この関係をずっと続けたいなと思っています」と語りました。