2019.04.04 POSTED

未体験ゾーンの映画たち2019 特別企画
橋口亮輔監督×尾崎世界観(クリープハイプ)によるスペシャルトークショー付き特別先行上映
イベントレポート

映画を観た感想を尋ねられると橋口監督「濃い映画だな、美しい映画だな、というのが端的な感想でした。みなさん不思議な映画だと思いませんでしたか?観ながらストーリーを追っているんですけど、観ている間自分のことを考えていたんですよね。」と、鑑賞後感を話すと、尾崎さん「自分のこと考えてしまう、というのはよく分かります。僕も他の人のライブを観ていても、いいライブだと感じると、自分のライブのことを考えてしまうんです。この映画にはそういう隙間がいい意味であったなと思います。」と賛同。

橋口監督は続いて、「少年の話なんだけど、“世界に踏み出す”“大人になる”っていう時って、僕もこの少年のようだったなと思った。心細いし、頼りないし、何か色々うまくできないんだよね。大人ってクソばっかり、大人って何でこんなことも分からないんだろうって思っていたけれど、実際世の中に踏み出してみると、そこは荒野のようだった。自分に照らして言うと、16〜7歳で作るということを始めて、作るって“自分とにらめっこすること”だと思うんだけど、そうなると自ずと逃げられないよね。自分を受け入れなければならない。もう一回世界を作り直すというか、世界に対して自分なりの意味を付け直していく。自分で意味を付け直さないと生きていけなくなってしまうんだよね。」と自身の経験に絡めて作品を振り返った。

橋口監督は印象的なシーンに関して「チャーリーが太ったな女の子に出会うシーンが好きで、僕はそういうシーンに心が惹きつけられるんだよね。彼女はスポットライトが当たらない人生、報われることのない人生を生きている。でもそんな女の子でも、一生に一回神に祝福されるような瞬間を迎えることがあるんだろうな、と思うんです。この映画全体もそうですが、監督が意識していたスタインベックの小説もそうなんだけど、”永遠の中の一瞬”みたいな、世界からしたら砂つぶみたいなものがひかり輝く瞬間がある。僕も自分の映画の中ではそういう人にスポットライトを当てるんです。」と自身の作品での表現に絡めた話をすると、尾崎さんも「僕も子供の頃ドラゴンボールを見て脇役のことを考えてました。」と話し、笑いが起こった会場は和やかな雰囲気に包まれた。

最後に印象的なラストシーンに関しての話になると、尾崎さんが「最後のチャーリーの眼差しにずっと思うところがあって、その印象で終わるのはすごく正しいな、と思いました。」と話すと、「あのシーンは素晴らしいですね。世の中って美しいものも汚いものもある中で、それが世界で、そこで僕は生きていく、そんな印象をラストシーンで受けました。」と監督。尾崎さんは「僕はもう少しきつい視線に感じました。映画という物語自体も疑っているような目線だな、と思いました。」と、同じシーンでも受け取り方の違うそれぞれの印象を共有し、深い余韻を残し本イベントは幕を閉じました。