『荒野にて』

  • アンドリュー・ヘイの世界に、ふっ飛ばされた。
    少年の絶望が、詩のような美しさで滲み出していく―。
    グザヴィエ・ドラン(映画監督) ★★★★★
  • 過酷で険しい人生という旅を描くと同時に
    生きることの素晴らしさを教えてくれる感動作。
    Time Out ★★★★★
  • 純粋さ、脆さを体現した
    プラマーの真に迫る演技は必見!
    The Guardian ★★★★★
  • 無限に広がる荒野の中で、かすかに揺れ動く心情さえも
    瞬時に捉えるアンドリュー・ヘイの手腕に感服!
    TheWrap ★★★★★

これは、厳しい現実の中でも、希望や心を失うまいと抗った少年の物語です。
私はこの物語に、感傷的になりすぎないながらも、大いなる感動と優しさを感じました。
この作品の持つ純粋さを、社会の淵で生きる人たちの人生を、正直さとリスペクトをもってスクリーンに描きたかった。

「確かに我々人間は弱く、病気にもかかり、醜く、堪え性のない生き物だ。
だが、本当にそれだけの存在であるとしたら、我々は何千年も前にこの地上から消えていただろう」

原作の序文に引用されているジョン・スタインベックのこの言葉を、この映画を作っている間中ずっと、心に置いていました。

監督:アンドリュー・ヘイ

INTRODUCTION

第74回ヴェネチア国際映画祭
マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞!

新星チャーリー・プラマーが魅せる、
自分の居場所を探し求める切望。

  • たったひとつの出来事から、長年連れ添った夫婦の絆がゆらいでいく姿を描き、数々の賞を受賞した『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督最新作。平穏だと思ってきた人生が、思わぬ方向へ動き出した際の心のざわめきを、時に厳しく時に優しく見つめることで高く評価されてきたヘイ監督が、今度はその眼差しを15歳の少年に向けた。赤ん坊の頃に母に捨てられ、可愛がってくれた伯母とは大人の事情で疎遠となり、経済力も教養もないが愛情だけは溢れていた父を亡くし、突然天涯孤独となったチャーリーだ。追い討ちをかけるように彼が家計のために世話をしてきた老いた競走馬ピートの殺処分が決まった日、チャーリーはたった一人馬を連れ、行く先の見えない荒野へと一歩を踏み出す─。

  •  少年チャーリー役には、リドリー・スコット監督の『ゲティ家の身代金』で誘拐される孫役に抜擢され、注目を集めたチャーリー・プラマー。人を疑うことを知らぬ、あどけない瞳の少年が、旅の果てに夢見る微かな希望と、彼を容赦なく呑み込む絶望とを繰り返し経験しながら成長していく姿を見事に演じ、第74回ヴェネチア国際映画祭で新人俳優賞となるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。心の揺れや痛みを繊細に表現する表情と演技力で、今最も“スクリーンで観たい”若手俳優に躍り出た。

  • 競走馬のオーナーのデルには、『ゴーストワールド』でゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、近年では『スターリンの葬送狂騒曲』のフルシチョフ役が話題となったスティーヴ・ブシェミ。さらに、ピートに騎乗する騎手ボニーには、『ボーイズ・ドント・クライ』でアカデミー賞®、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたクロエ・セヴィニー。アート系作品に独自の爪痕を残してきた二人が、ままならない運命を受け入れる人生にもそれぞれの尊厳があることを少年に示す人物を、滋味深く演じた。
     チャーリーが分け入るアメリカ北西部の大自然は、凄まじくも厳しく、荘厳なほどに美しく、それはまさに彼の人生の姿だった。愛と居場所を求めるチャーリーが荒野の果てに見たものとは? 私たちの胸の奥に深い感動を刻む、リアルで繊細な人間ドラマが誕生した。

STORY

天涯孤独な少年と、走れなくなった競走馬。
彼らは居場所を求め、希望と絶望の境を進んでいく。
それは人生という名の長い旅路―。

  •  チャーリー(チャーリー・プラマー)は15歳にして孤独だった。仕事を変えては転々と暮らす父親(トラヴィス・フィメル)と二人でポートランドに越してきたのだが、父は息子を愛しながらも自分の楽しみを優先していた。母親はチャーリーが赤ん坊の頃に出て行ったので、もちろん覚えていない。以前はマージー伯母さん(アリソン・エリオット)が何かと面倒を見てくれたが、チャーリーが12歳の時に父と伯母さんが大ゲンカをしてしまい、以来すっかり疎遠になった。チャーリーは寂しくなると、伯母さんと一緒に写った写真を眺めるのだった。
     ある日、家の近くの競馬場で、デル(スティーヴ・ブシェミ)という厩舎のオーナーから競走馬リーン・オン・ピートの世話を頼まれたチャーリーは、食べ物も十分に買えない家計を助けるため引き受ける。素直で呑み込みが早く、馬を可愛がるチャーリーは、すぐにデルに気に入られた。
  •  その夜、チャーリーは男の罵声で目を覚ます。「女房と寝たろ!」と、以前父が家に泊めた女の夫が怒鳴り込んできたのだ。殴り飛ばされた父はガラス窓を突き破り、大ケガを負ってしまう。恐怖に立ちすくみ何も出来なかったチャーリーは、自らの非力さにショックを受けながらも手術を終えた父に「ごめん、助けてあげられなくて」と謝り、マージー伯母さんの電話番号を教えてほしいと頼むが、「人の手は借りない」と跳ね付けられる。
     唯一の家族であり、予断の許されない状態の父の傍を離れるのは怖かったが、入院費を稼ぐためにピートの遠征に付き添うチャーリー。騎手のボニー(クロエ・セヴィニー)からは「馬を愛しちゃダメ。競走馬は勝たなきゃクビよ」と忠告されるが、今やピートはチャーリーが唯一心を許せる存在だった。翌日、仕事から病院へ戻ると父の姿がない。容体が急変して亡くなったという。引き取り手の居ないチャーリーを心配し、養護施設に連絡しようとする医師を振り切り、彼はピートの厩舎へと走る。

  •  だが、老いたピートの競走馬としての寿命も尽きかけていた。レースに惨敗したピートを、デルは売り払うと決める。それは殺処分を意味していた。今度こそ自分の手で友を助けると決意したチャーリーは、ピートを乗せたトラックを盗み、かつてマージー伯母さんの住んでいたワイオミングを目指して逃走する。
     やがてトラックがエンストを起こし、ピートを連れて荒野へと分け入るチャーリー。日中は黙々と歩き続け、夜には野宿し、父から聞いた母のこと、楽しかった学校生活やマージー伯母さんとの思い出をピートに語り続けるチャーリー。けれども現実は厳しく、チャーリーはあまりに非力だった。残酷にもチャーリーを襲う再びの別れ。チャーリーは孤独を抱きしめ、愛と居場所を求めてひたすら前へと進んでいくが─。

STAFF

アンドリュー・ヘイ(監督・脚本)
Andrew Haigh Director・Screenplay

1973年3月7日、イギリス生まれ。
ハリウッドで『グラディエーター』(00)や『ブラックホーク・ダウン』(01)の編集補佐を務めたのち、09年に『Greek Pete』で長編映画監督デビューを果たす。監督2作目の『ウィークエンド』(11)ではサウス・バイ・サウスウエスト映画祭の新進映像部門にて観客賞を受賞。その他、イブニング・スタンダード・英国映画賞の最優秀脚本賞、ゲント国際映画祭作品賞など多数の映画賞を受賞。そして15年にシャーロット・ランプリングとトム・コートネイを迎えた『さざなみ』が、第65回ベルリン国際映画祭にてコンペティション部門に選出され、銀熊賞のダブル受賞(最優秀女優賞、最優秀男優賞)に輝く。シャーロット・ランプリングは全米批評家協会賞にて主演女優賞を受賞。第88回アカデミー賞®では主演女優賞にノミネートされるなど映画賞を席巻。本作は国内外問わず高い評価を獲得し、アンドリュー・ヘイの名を世界中に知らしめた。また映画以外にもHBOのテレビシリーズ「Looking/ルッキング」(14-15)でエグゼクティブ・プロデューサーを務め、一部脚本・監督を担当する等活動の幅を広げている。

ウィリー・ヴローティン (原作)
Willy Vlautin Novel

1967年、アメリカ・ネバダ生まれ。
作家、ミュージシャン、ソングライターとして活躍。オレゴン州ポートランドのロックバンドRichmond Fontaineのリードボーカル、ギターを務めていたが、16年に解散。現在はThe Delinesのメンバーとして活動している。音楽活動と並行し、07年に「The Motel Life」で小説家デビュー。この作品は世界11か国で翻訳され、国内外数々のトップ10リストに掲載。翌08年には「Northline」を発表し、「Lean On Pete」(10)、「The Free」(14)、「Don’t Skip Out On Me」(18)と現在までに5作品を執筆している。
12年にはデビュー作「The Motel Life」が、スティーヴン・ドーフ、エミール・ハーシュ、ダコタ・ファニングら出演の『ランナウェイ・ブルース』として映画化。自身の小説の映画化は今作で2作目となる。本作の劇中曲「Easy Run」はヴローティンが参加していたバンドグループRichmond Fontaineの楽曲である。