ABOUT THE MOVIE
ノミネート 2022年
世界49映画祭以上に出品
鋭く、不穏、心奪われる 信じられないほど恐ろしい。 ぞっとする。 ザーラ・アミール・エブラヒミも演技は演技は息を呑むほど素晴らしい。 光り輝く衝撃だ
INTORODUCTION
聖地の闇に狂気が満ちる-

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞した北欧ミステリー『ボーダー 二つの世界』で、私たちが無意識に引く“境界”を暴き出し、差別や優劣意識を白日の下に晒した北欧ミステリーの鬼才アリ・アッバシ。彼が着想を得たのは、2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで殺人鬼“スパイダー・キラー”が16人もの娼婦を殺害した連続殺人事件。前作『ボーダー 二つの世界』で、善と悪、美と醜など世の中のあらゆる“境界”の既成概念を揺さぶり、私たちに潜む差別や優劣意識を白日の下に晒したアッバシ監督。人間の本性を凝視する視線はそのままに、本作では、娼婦連続殺人事件の全容から、私たち人間に潜在する狂気と恐怖を暴き出す。15年の構想を経て描く本作は、世界49以上の映画祭を席巻、デンマークのアカデミー賞ロバート賞で11部門を制覇、アカデミー賞デンマーク代表作品にも選出された。

デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス合作映画の本作は、イラン出身で北欧を拠点に活躍するアッバシ監督ならではの視点で人間の暗部を大胆に暴く、イラン国内の映画では描き得なかった作品。イランでの撮影の許可が下りず、撮影地はヨルダンのアンマンになった。

カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したのは、主演のザーラ・アミール・エブラヒミ。彼女は、第三者による私的なセックステープの流出によってスキャンダルの被害者となり、2008年、国民的女優として成功を収めていたイランからフランスへの亡命を余儀なくされた。一方、彼女が演じる果敢な主人公ラヒミにも、性差別的なスキャンダルで不当に職を追われた過去がある。自身の人生に重なる役柄を、主人公が直面する不条理への怒りに基づく鬼気迫る演技で体現、その素晴らしい演技は、彼女に受賞という大きな栄誉をもたらした。

人間の深淵に潜む狂気を極限まで掘り下げたとき、私たちは何を見るのか――。緊迫感途切れぬ衝撃のクライム・サスペンスが誕生した。

  • カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞した北欧ミステリー『ボーダー 二つの世界』で、私たちが無意識に引く“境界”を暴き出し、差別や優劣意識を白日の下に晒した北欧ミステリーの鬼才アリ・アッバシ。彼が着想を得たのは、2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで殺人鬼“スパイダー・キラー”が16人もの娼婦を殺害した連続殺人事件。前作『ボーダー 二つの世界』で、善と悪、美と醜など世の中のあらゆる“境界”の既成概念を揺さぶり、私たちに潜む差別や優劣意識を白日の下に晒したアッバシ監督。人間の本性を凝視する視線はそのままに、本作では、娼婦連続殺人事件の全容から、私たち人間に潜在する狂気と恐怖を暴き出す。15年の構想を経て描く本作は、世界49以上の映画祭を席巻、デンマークのアカデミー賞ロバート賞で11部門を制覇、アカデミー賞デンマーク代表作品にも選出された。
  • デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス合作映画の本作は、イラン出身で北欧を拠点に活躍するアッバシ監督ならではの視点で人間の暗部を大胆に暴く、イラン国内の映画では描き得なかった作品。イランでの撮影の許可が下りず、撮影地はヨルダンのアンマンになった。

    カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したのは、主演のザーラ・アミール・エブラヒミ。彼女は、第三者による私的なセックステープの流出によってスキャンダルの被害者となり、2008年、国民的女優として成功を収めていたイランからフランスへの亡命を余儀なくされた。一方、彼女が演じる果敢な主人公ラヒミにも、性差別的なスキャンダルで不当に職を追われた過去がある。自身の人生に重なる役柄を、主人公が直面する不条理への怒りに基づく鬼気迫る演技で体現、その素晴らしい演技は、彼女に受賞という大きな栄誉をもたらした。
  • 人間の深淵に潜む狂気を極限まで掘り下げたとき、私たちは何を見るのか――。緊迫感途切れぬ衝撃のクライム・サスペンスが誕生した。
STORY

聖地マシュハドで起きた娼婦連続殺人事件。「街を浄化する」という犯行声明のもと殺人を繰り返す“スパイダー・キラー”に街は震撼していた。だが一部の市民は犯人を英雄視していく。事件を覆い隠そうとする不穏な圧力のもと、女性ジャーナリストのラヒミは危険を顧みずに果敢に事件を追う。ある夜、彼女は、家族と暮らす平凡な一人の男の心の深淵に潜んでいた狂気を目撃し、戦慄する——。

ABOUT THE CAST
メフディ・バジェスタニ(サイード役)

メフディ・バジェスタニ
(サイード役)

MORE
ザーラ・アミール・エブラヒミ(ラヒミ役、アシスタント・プロデューサー、キャスティング兼務)

ザーラ・アミール・エブラヒミ
(ラヒミ役、アシスタント・プロデューサー、キャスティング兼務)

MORE
ABOUT THE FILMMAKERS
メフディ・バジェスタニ(サイード役)

監督・共同脚本・プロデューサー
アリ・アッバシ

MORE

製作
ソル・ボンディ

MORE

製作
ヤコブ・ヤレク

MORE

編集
オリビア・ニーアガート=ホルム

MORE

撮影監督
ナディーム・カールセン
(ドイツ映画協会)

MORE

プロダクションデザイン
リナ・ノールドクヴィスト

MORE

作曲
マーティン・ディルコフ

MORE
holyspider

メフディ・バジェスタニ(サイード役)

メフディ・バジェスタニ
(サイード役)

1975年1月12日生まれ。舞台や映画で活躍しているイラン人俳優。1997年にイランのシティ・シアターで上演された、ベルトルト・ブレヒトの戯曲、ハミド・サマンダリアン演出の『コーカサスの白墨の輪』で舞台デビューを果たした。それ以来、ヴァヒド・ラフバニ、シャハブ・ホセイニ、マエデ・タフマセビなど、イランの現代舞台演出家たちとタッグを組み、800回以上もの舞台を踏んできた。この20年間では、テレビや映画作品に定期的に出演しており、その代表的な作品に、“Sweet Taste of Imagination”(15)、“There Are Things You Don’t Know”(10)などの長編映画や、テレビドラマ “Whisper”(18)、高い評価を受けているアスガー・ファルハディ監督の『美しい都市(まち)』(04)などがある。

メフディ・バジェスタニ(サイード役)

ザーラ・アミール・エブラヒミ
(ラヒミ役、アシスタント・プロデューサー、キャスティング兼務)

1981年7月9日生まれ。パリ在住のイラン人女優。テヘラン出身のエブラヒミは、大学で演劇芸術を専攻した。舞台作品や、テレビや映画の人気作品で活躍し、“Help Me”(04)、“Nargees”(07)などの連続テレビドラマで国内の注目を集めた。エブラヒミがイランで出演した長編映画、“Waiting”(01)、“Trip to Hidalu”(06)は、政府による検閲の結果、上映禁止となった。イラン国外では、2017年にカンヌ国際映画祭でプレミア上映されたロトスコープアニメ映画“Tehran Taboo”で世界の注目を集めた。2018年には“Bride Price vs Democracy”の演技で、ニース国際映画祭の最優秀女優賞に輝いた。また “Tomorrow We Are Free”(19)は、タリン・ブラックナイト映画祭やハンブルグ映画祭などで上映された。次作であるギヨーム・レヌッソン監督の“Les Survivants/White Paradise”(22)では、ドゥニ・メノーシェの相手役として主演している。

監督・共同脚本・プロデューサー アリ・アッバシ

監督・共同脚本・プロデューサー
アリ・アッバシ

1981年にイランで生まれ、テヘランの大学に在学中にストックホルムに留学し、建築学の学士号を取得。その後、デンマーク国立映画学校で演出を学び、2011年に短編映画“M for Markus”を制作して卒業した。長編映画デビュー作『マザーズ』は、2016年にベルリン国際映画祭でプレミア上映され、アメリカで公開された。2018年の映画『ボーダー 二つの世界』は、カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、ある視点部門のグランプリを受賞した。また、アカデミー賞スウェーデン代表作品に選出、世界中で公開、スウェーデン・アカデミー賞(ゴールデン・ビートル6部門受賞 作品賞、主演女優賞、助演男優賞、音響編集賞、メイクアップ&ヘア賞、視覚効果賞)、第91回 アカデミー賞(2019年)メイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネート、ヨーロッパ映画賞では監督賞、脚本賞、作品賞の3部門にノミネートされるという快挙を遂げた。最新作は、HBO製作のテレビ版 “The Last of Us”。

製作
ソル・ボンディ

1979年にロンドンで生まれ。数々の受賞歴を誇るプロデューサーで、ベルリンを拠点に活動。2010年に、ヨーロッパ映画賞(EFA)にノミネートされた、ヤン・スペッケンバッハ監督の“Reported Missin”を手掛けてドイツ映画テレビアカデミー(DFFB)を卒業後、国際共同製作を専門とするOne Two Filmsを立ち上げた。同社が手がけた作品には、トロント国際映画祭とローマ映画祭で観客賞を受賞したパン・ナリン監督作“Angry Indian Goddesses”、カンヌ国際映画祭のある視点部門のグランプリやヨーロッパ映画賞を受賞したユホ・クオスマネン監督『オリ・マキの人生で最も幸せな日』(16)、サンダンス映画祭出品ジェニファー・フォックス監督・主演ローラ・ダーン『ジェニーの記憶』(18)など。ヨーロッパ映画アカデミーの会員であり、プラハ映画テレビ学校、ポツダム映画大学、ドイツ映画テレビアカデミーなどで教鞭をとっている。

製作
ヤコブ・ヤレク

ポーランドのクラクフ出身、ノルウェーで育った。2011年にデンマーク国立映画学校を卒業し、同年にプロファイル・ピクチャーズ社(Profile Pictures)を共同設立。代表作は、グリームル・ハゥコーナルソン監督『ひつじ村の兄弟』(15)、アリ・アッバシ監督『マザーズ』(16)、フェナル・アーマド監督『皆殺しのレクイエム』(17)、HBO Max のシリーズ“Kamikaze”(21)、クリスチャン・タフドロップ監督“Speak No Evil”(22)など。ヨーロッパ映画アカデミーの会員であり、2017年にはロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)のイブ賞に輝いた。

編集
オリビア・ニーアガート=ホルム

2013年にデンマーク国立映画学校を卒業。長編映画、テレビシリーズ、ドキュメンタリーなどの多種多様な作品を手がけてきた。手掛けてきた作品は、ゼバスチャン・シッパー監督『ヴィクトリア』(15)、ジョン・グエン、オリヴィア・ニーアガート=ホルム監督『デヴィッド・リンチ:アートライフ』(16)、アリ・アッバシ監督『マザーズ』(16)『ボーダー 二つの世界』(18)、イザベラ・エクルーフ監督『ビッチ・ホリデイ』(18)ダニエル・デンシック監督『MISS OSAKA/ミス・オオサカ』(21)など。

撮影監督
ナディーム・カールセン
(ドイツ映画協会)

デンマーク出身。2011年にデンマーク国立映画学校を卒業して以来、長編映画を幅広く手がけ、2018年には、バラエティ誌の「注目するべき映画カメラマン10人」に選出。代表作は、アリ・アッバシ監督『マザーズ』(16)、『ボーダー 二つの世界』(18)、イラム・ハーク監督“What People Will Say”(18)など。2019年『ビッチ・ホリデイ』で、デンマーク映画批評家協会が主催するボディル賞の撮影賞に輝いた。

プロダクションデザイン
リナ・ノールドクヴィスト

2007年ストックホルムにあるベックマンズ・カレッジ・オブ・デザインを卒業後、リナ・ノールドクヴィスト・デザイン社を創設。数々の長編映画やテレビシリーズでプロダクションデザインを担当。短編映画、コマーシャル、広告キャンペーンなども手がけている。2013年、映画『コールガール』で、ゴールデン・ビートル賞(スウェーデンアカデミー賞)の最優秀プロダクションデザイン賞に輝いた。同作ではトリノ映画祭のプロダクションデザイン部門で、バッサン・アーツ・アンド・クラフト賞を受賞。代表的な作品には、ローアル・ユートハウグ監督『THE WAVE/ザ・ウェイブ』(15)、ヤヌス・メッツ監督『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(17)など。アンネ・セウィツキー監督“Sonja: The White Swan”(18)では、ノルウェーのアカデミー賞ともいわれるアマンダ賞最優秀プロダクションデザインを受賞した。

作曲
マーティン・ディルコフ

デンマーク出身。2011年にデンマーク国立映画学校を卒業。代表的な作品には、アリ・アッバシ監督『マザーズ』(16)、『ボーダー 二つの世界』(18)、イザベラ・エクルーフ監督『ビッチ・ホリデイ』(18)、アンデルス・ウールホルム、フレデリック・ルイ・ヴィー監督『アンコントロール』(20)など。映画のほか、コマーシャル、アニメーションやアート映画のサウンドデザインも手がけている。

映画化のきっかけ

『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イランで最も悪名高き連続殺人犯、サイード・ハナイの壮絶な一生を描いた作品だ。犯人が敬虔な信者で模範的な人物であることを踏まえると、イラン社会に対する風刺作品であるともいえる。ハナイが聖なる街マシュハドで娼婦を襲っていた2000年代初頭は、私もまだイランに住んでいた頃だった。ハナイは、逮捕され、裁判にかけられるまでに、16人もの女性を殺害した。私がこの事件に関心を持ったのは、その裁判が行われている時だった。普通の世界なら、16人も殺した男は犯罪者として見られるはずだ。しかし、ここでは違った。一部の市民や保守派メディアは、ハナイを英雄として称え始め、ハナイは“汚れた”女たちを街から始末するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したのだ。私はそれを知った時に、この出来事を基に映画を作ろうと思った。

監督が作ろうとしたもの

連続殺人犯の映画を作りたかったわけではない。私が作ろうと思ったのは、連続殺人犯も同然の社会についての映画だった。イラン社会に深く根付いている女性蔑視(ミソジニー)の風潮は、宗教や政治が理由というわけではなく、単純にそういう文化として存在している。女性蔑視は、国に限らず、人々の習慣の中で植え付けられる。イランには昔から、女性を憎むべき対象とする考えがあり、差別というかたちになって現れることも少なくない。それがありのままに描かれているのがハナイの物語だ。だからこそ、彼の物語を伝えるならば、賛成から反対意見まで、イラン社会には様々な意見が行き交っていることを示す必要があったのだ。

犯人・サイードについて

サイード・ハナイは加害者であり、被害者でもある。イラン・イラク戦争では、兵士として青春時代を国に捧げた。国はより良くなり、意義深い人生になると思ったのだろう。しかし、そこで彼が気づいたのは、戦争で身を犠牲にしたところで何も変わらず、社会にとっては自分はどうでもいい存在であるということだった。彼は自分の存在意義を失うも、神を信じることはやめなかった。ハナイはモスクに通い、礼拝堂で涙を流す。そこで彼は、アッラーからの使命という新たな目的を見つけるのだ。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』が描くもの

『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イラン政府への批判でも、腐敗した中東社会に対する批判でもない。一部の人達、中でも女性に対する人間性の抹殺は、イランに限ったことではなく、世界中のあらゆる場所で起きている。

私は、本作を、社会問題を扱った作品ではなく、特定の人物に焦点を当てた物語として捉えている。ハナイの物語や人格に支配されてしまうような作品にはしたくなかった。一人の男がどんな方法を駆使して大勢の女性を殺したのかを描くより、問題の複雑さと様々な立場の主張に光を当てたいと思った。それは事件の被害者のためでもある。また、ラヒミの物語も、ハナイと同じく本作のカギとなる。彼女が事件を追う姿を描きながら、家族、社会、そして自己との葛藤をどのように乗り越えるのかに迫りたいと思った。

ハナイの被害者となった女性達を、娼婦という肩書だけで片づけることはできない。彼女たちは皆、一人の人間として存在していたのだ。そんな彼女たちから奪われてしまった尊厳と人間らしさが、少しでも取り戻せることを願っている。聖人としてでも、不運な被害者としてでもなく、私達と同じ一人の人間として。

聖地マシュハドについて
About Mashhad

マシュハドは、350万人の人口を抱える、イランで2番目に大きな都市であり、非常に保守的な宗教の中心地でもある。マシュハドは、イラン国内における最大の聖地として、毎年2000万人以上もの観光客と巡礼者が訪れる。訪れる人の大半の目的が、「シーア派イランの心臓部」と呼ばれている壮麗なモスク、イマーム・レザー廟への参拝だ。イマーム・レザー廟は中世からの歴史を持つ巡礼地で、メッカ巡礼を終えた者は「ハッジ」の称号を与えられる。マシュハドに巡礼した者は「マシュティー」と呼ばれ、マシュハドの住民も同じように呼ばれている。2009年10月30日(イマーム・レザーの殉教記念日)には、当時のイラン大統領、マフムード・アフマディネジャードが、マシュハドを「イランの精神的中心」と呼んだ。