INTRODUCTION

『君の名は。』(16)、『すずめの戸締まり』(22)などを手掛けてきたアニメーションスタジオ、コミックス・ウェーブ・フィルム。2007年の設立以来、一貫してオリジナル企画にこだわり続けてきた同社が、新たな才能と共にかけがえのない愛の物語を紡ぎ出した。

緻密な画面設計、木々や波のさざめき、光の一瞬の表情を映しとった微細な風景描写、願いをひとつだけ叶えてくれる存在とその代償という神話的な示唆に富んだ世界観、人間の残酷な本質に踏み込んだ心情描写――すべての瞬間を濃密にフィルムに閉じ込め、作品として創り上げたのは、本作が商業アニメ初監督作となる注目の新鋭・片野坂 亮。たった一人で3年かけて作り上げた自主アニメーション作品で業界関係者を驚嘆させ、デビューを掴んだ異色の経歴の持ち主が原作・脚本・監督を一手に担い、通常40人程で分担するラフ原画全325カット中、約3分の2を自ら担当。作画監督としても全カットに携わり、新海誠監督作品など数々の有名アニメーション現場で活躍してきた精鋭のスタッフたちと融合を果たした。

主人公・湊に命を吹き込むのは、並ぶもののない存在感を放つ、あの。どこにも逃げ場のない10歳の少年の切なる叫びを、ビビッドに刻み付ける。べんちゃん役には、大ヒットシリーズから文学的な作品まで幅広く活躍する花澤香菜。忘れられかけた神さまの哀愁と慈愛が、彼女のイノセントな声によって見事に具現化した。父・マサルに扮したのは長年第一線で走り続ける三木眞一郎。我が子への愛と狂気の危うい二面性を痛切に体現し、本作が内包する現実味を片時も忘れさせない。
愛を求め続ける少年が、次第に自分の存在と引き換えに破滅を願ってしまう切実さ。愛と暴虐、喪失と赦し、消滅と再生――。本作は、暗い海に浮かぶ一筋の光=しらぬひのように、見つけてもらえない誰かを照らし、憎しみの奥底で消え入りそうな心をそっと抱きしめる、愛の物語だ。

STORY

物語の舞台は1996年、夏の終わり。
熊本の海辺の町で暮らす10才の少年・湊(みなと)は、
酒に溺れる父とふたりきりで、息をひそめるように生きていた。
唯一の心の拠り所は、弁天島に現れる少女の神さま“べんちゃん”。
彼女と過ごすひとときだけが、自分を取り戻せる時間だった。
しかし湊が児童保護施設に一時保護されることが決まり、べんちゃんとの別れの時が迫る。
湊は、ひとつだけ願いを叶えてくれるという、海に浮かぶ不思議な光<しらぬひ>に
祈りを捧げるが、 父への憎しみが募るにつれ、
その“祈り”は取り返しのつかない“呪い”へと姿を変えていく。
喪失と赦しの果てに、湊が辿り着く「ほんとうの願い」とは――
愛を求めるがゆえにすれ違い、憎しみに呑まれていく少年。
その奥底で消え入りそうな心をそっと抱きしめる、愛の物語。

STAFF

  • 片野坂 亮

    原作・脚本・監督・作画監督

    片野坂 亮

    かたのさか・りょう

    1987年生まれ、福岡県出身。成安造形大学で映像制作を学び、卒業後はスーパーの鮮魚コーナーで働きながらフリーランスとして活動。企業CMなどの実写映像を手がけ、2015年、長編実写映画 『たびのやまびこ』で監督を務める。近年、独学でアニメーション制作を始め、約2分の短篇アニメ『らお』を一人で自主制作。同作を見たコミックス・ウェーブ・フィルムに大抜擢され、初の商業アニメーション映画に挑む。

    COMMENT

    はじめまして、監督の片野坂亮です。
    本作の登場人物たちは、心のどこかで愛を求めながらすれ違い続け、やがて自分でも止められない衝動へとたどり着いていきます。願いは祈りであると同時に、誰かを縛り続ける呪いでもある。痛みを抱えながら、それでも生きようとする彼らの声にならないものを描きたい。キャストの皆さまにはその思いをお伝えし、収録に臨みました。
    湊役のあのさんは、湊の胸の奥にある怒りや憎しみ、そしてそこに秘められた優しさを、まっすぐに表現してくださいました。収録を重ねる中で、その声は痛みに立ち向かう湊そのものになっていき、感情を瞬時に声へ乗せていく表現力に何度も驚かされました。べんちゃん役の花澤香菜さんには、本編では語りきれない背景や、湊に向けている感情についてお伝えしました。友達のような無邪気さ、姉のような距離感、母のような包容力、そして神さまとしての静けさ。そのすべてを、ひとつの存在として丁寧に宿してくださいました。マサル役の三木眞一郎さんには、セリフの端々から見え隠れする父性を通して、あらためて彼が湊の父であることに気づかせていただきました。決して単純な悪ではなく、弱さや歪みを抱えた一人の人間として、マサルという人物に確かな体温を与えてくださいました。
    また、ここにお名前を挙げきれない多くのキャストの皆さま、スタッフの皆さまの支えがあって、『しらぬひ』は形になりました。この映画が、誰にも言えない気持ちを抱えたまま夜を越えている誰かの心に、少しでも届くことを願っています。

  • 梅林太郎

    音楽

    梅林太郎

    うめばやし・たろう

    1980年生まれ、東京都出身。東京藝術大学作曲科卒業後、2012年、金沢のRallye Labelよりアルバム「greeting for the sleeping seeds」をリリース。以降、アニメ「ユーリ!!! on ICE」「光が死んだ夏」をはじめとする劇伴音楽、ゲーム、「リバース:1999」配信記念楽曲「The Gleaming」など広告音楽を多数手掛けるほか、国内外のアーティストとのプロデュースやコラボレーションを行ってきた。近年では青葉市子のアルバム「アダンの風」「Luminescent Creatures」にて共同作編曲を担っている。

  • 青葉市子

    主題歌

    青葉市子

    あおば・いちこ

    1990年生まれ。音楽家。2010年デビュー。クラシックギターを中心とした繊細なサウンドと夢幻的な歌声、詩的世界観で国内外から高い評価を得る。2025年には8枚目のアルバム「Luminescent Creatures」を携え80以上の都市で公演を行い、地球を二度巡る規模となった。

VOICE CAST

  • あの

    湊 役

    あの

    9月4日生まれ。タレント、女優、声優、モデルと活動は多岐にわたり、若い世代の女性を中心に人気を誇る。2020年9月より「ano」名義での音楽活動を開始し、2022年4月TOY’S FACTORYよりメジャーデビュー。同年10月TVアニメ「チェンソーマン」エンディング・テーマに「ちゅ、多様性。」が抜擢。2023年末には日本レコード大賞特別賞を受賞。NHK紅白歌合戦にも出場。2024年3月映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』主演声優と主題歌を担当。同年4月には映画『【推しの子】』にもMEMちょ役で出演。2025年9月には自身初の日本武道館公演を開催。2026年6月テレ東系ドラマ25「わたしの相殺日記」では地上波ドラマ単独初主演を務める。

    COMMENT

    主人公、湊役を演じさせていただきました。
    少年の声を吹き込むのは初めてで挑戦的でしたが、子供でありながら子供らしくいることのできない環境に身を置く10才の揺れ動く感情を精一杯演じさせていただきました。
    ぜひ劇場でご覧ください。

  • 花澤香菜

    べんちゃん 役

    花澤香菜

    はなざわ・かな

    1989年2月25日生まれ、東京都出身。声優、女優、歌手としてマルチに活躍し、唯一無二の透明感ある声と確かな演技力で世代を超えて支持を集める。これまでに数々の人気作品でメインキャラクターを務め、国内外のアニメファンから高い人気を誇る。主な出演作に、吹き替え『羅小黒戦記』シリーズ(シャオヘイ役)、『劇場版 呪術廻戦 0』(祈本里香役)、「鬼滅の刃」(甘露寺蜜璃役)、「化物語」(千石撫子役)、「PSYCHO-PASS」(常守朱役)、「五等分の花嫁」(中野一花役)など。

    COMMENT

    不器用に懸命に生きている湊の姿を、ただひとり見守っているべんちゃん。
    美しい映像とは対照的に、湊の孤独や恨みに胸が痛みます。観ている皆さまにも、べんちゃんと一緒に彼の隣にいてあげてほしいです。
    場面によって、神々しかったり親しみやすいお姉さんだったり印象が変わるべんちゃんですが、彼女が何者なのかにも注目してみてください!

  • 三木眞一郎

    マサル 役

    三木眞一郎

    みき・しんいちろう

    1968年3月18日生まれ、東京都出身。声優として長年第一線で活躍し、クールな役柄からコミカルなキャラクターまで自在に演じ分ける高い表現力で幅広い世代から支持を集める。主な出演作に、「鋼の錬金術師」(ロイ・マスタング役)、「ポケットモンスター」(コジロウ役)、「BLEACH」(浦原喜助役)、「銀魂」(坂本辰馬役)、「薄桜鬼」(土方歳三役)など。

    COMMENT

    「生き方」ではなく、「生きる」というコトに、向き合わされる作品だと思います。
    収録現場も緊張感に溢れておりました。
    多くの方に届くと嬉しいです。

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