STORY
今日もブリュノ(ヴァンサン・カッセル)は、朝から駆けずり回っていた。自閉症の子供たちをケアする団体〈正義の声〉を運営しているのだが、支援している青年の一人ジョゼフが、電車の非常ベルを鳴らして鉄道警察に取り押さえられたのだ。ジョゼフを家まで送り届けると、今度は緊急地域医療センターへと向かう。重度の症状から6か所の施設に受け入れを断られたヴァランタンという少年の一時外出の介助を頼まれたのだ。長年にわたって閉じこめられたせいで、ヴァランタンは完全に心を閉ざしていた。頭突き防止のヘッドギアをつけて、一人で立ち上がることもできない彼を見ても、ブリュノはいつもの言葉を口にする─「何とかする」。
施設に戻ると、待ち受けていた会計士から、監査局の調査が入ることになり、不適切な組織だとジャッジされれば、閉鎖を命じられると忠告される。赤字経営で無認可、法律の順守より子供たちの幸せを最優先するブリュノの施設は、役人に叩かれれば山のように埃が出る状態だった。
ブリュノはヴァランタンの介助を、マリク(レダ・カテブ)に相談する。ドロップアウトした若者たちを社会復帰させる団体〈寄港〉を運営するマリクは、教育した青少年をブリュノの施設に派遣していた。マリクは遅刻ばかりでやる気のない新人のディランを、ヴァランタンの介助人に抜擢する。
そんな中、調査員が関係者との面談を始める。まずはジョゼフの母親が、無認可の組織の落ち度を探られるが、彼女はいかにブリュノが親身で熱心かを力説し、「認可なんて関係ない」と言い切るのだった。
ジョゼフの勤め先を見つけようと、1万通メールしても断られ続けたブリュノだが、ようやく試しに1週間雇ってくれる洗濯機工場が現れる。だが、それも長くは続かなかった。一方、運動に連れ出されたヴァランタンも、遅れてきたディランの鼻に頭突きをしてしまう。直前まで手を握っていたのにと憤然とするディランに、ブリュノは虐げられてきた彼らの恐れや怒りを想像するようにとアドバイスするのだった。
調査員は次なるターゲットのマリクに、大半の支援員が無資格だと詰め寄るが、マリクは資格があれば暴れる子を抑えられるのかと鼻で笑う。緊急地域医療センターの医師も、3か月で退院しなければならない患者を無条件で受け入れてくれるのは、「心と信念で働いている」ブリュノだけだと証言する。
調査員が称賛の声にも耳を貸さず、無秩序で怪しげな団体だと決めつける中、事件は起きてしまう。ディランが目を離した隙に、ヴァランタンが姿を消したのだ。ヴァランタンはどこへ消えたのか? そして施設はこのまま閉鎖に追い込まれるのか? 救いの手が必要な子供たちの未来は─?