心に響く音楽、万雷の拍手、そこは奇跡にあふれている。

甦る三大テノール 永遠の歌声

プラシド・ドミンゴ ホセ・カレーラス ルチアーノ・パヴァロッティ

1990年ローマ カラカラ浴場のコンサートから30年、初めて明かされる世紀の競演のバックステージ秘蔵映像等で紡ぐドキュメンタリー映画誕生

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2021年1月8日(金) Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開

Introduction

三大テノールのはじまり

1990年、FIFAワールドカップの歓喜とともにプッチーニの「誰も寝てはならぬ」は世界中の人々の耳に届くことになった。ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス、3人のテノール歌手が集い、世界54か国で8億人が視聴した“三大テノール”のコンサートがズービン・メータの指揮のもと初めて開催されてから30年。コンサート映像として公開された『三大テノール 世紀の競演』(10)、『三大テノール 夢のコンサート』(16)とは違い、カラカラ浴場、ドジャー・スタジアムでのコンサートのこれまで未公開であったバックステージ映像と3人の17年間の活動の軌跡をドミンゴ、カレーラス、メータを含む多くの関係者の証言によって紡ぐドキュメンタリー映画が誕生した。同じ時代にオペラ界で活躍し、ライバル同士として知られていた3人が、何をきっかけに同じ舞台で競演を果たし、どのように成功を手にしたかの詳細が紐解かれていく。

今でも色褪せない歌声

ロン・ハワード監督のドキュメンタリー『パヴァロッティ 太陽のテノール』(19)ではパヴァロッティの人生を照らし伝え、本作では、パヴァロッティとともに今でもクラシック音楽界で活躍を続けるプラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスがどのよう世界の多くの人の記憶に残る歌手となったこと改めて教えてくれる。3人の性格の違いを関係者は、“優しく天使のような声を持つスター パヴァロッティ”、“真面目なドミンゴ”、“最年少で恐れ知らずのカレーラス”と表現する。最年少のカレーラスは1987年40歳の時に急性白血病と診断され、彼の復活を祝福するためのカラカラ大浴場のコンサートの歌唱で完全復帰を果たし称賛を受けた。そして、すでにオペラ歌手として世界三大歌劇場(ウィーン、スカラ座、MET)でめざましい活躍をしていたパヴァロッティとドミンゴはその人気を不動のものとしていく。パヴァロッティ他界後、新しいテノール歌手を加入することはせず、二人は音楽監督、オペラ歌手等多彩な才能を生かして今でも現役で活躍している。そんな彼らの当時の歌声は、今も色あせることなく聞く者に感動を与える。

音楽史に残る活躍

FIFAワールドカップ・サッカーの前夜祭として開催された彼らのコンサートは、パヴァロッティがこの世を去るまで4回開催された。1990年ローマ、1994年ロサンゼルス、1998年パリ、2002年横浜。それらのコンサートは集客のみならず、世界各国で放映もされ大成功を収めるも、“大衆のための歌声”、“クラシック音楽の俗化”と揶揄され、彼らの活躍を認めない評論家も多くいた。しかし、今でも当時のCDが売れ続けているということは、多くのファンに音楽の偉大さ、すばらしさを伝えていることは紛れもない事実であり、彼らこそが傑出した三大テノールであり、芸術品なのである。新しい日常に向き合う今だからこそ、彼らの歓喜溢れる歌声を映画館で体験し、新しい音楽の楽しみ方を発掘するのも良いのかもしれない。

Outline

奇跡のコンサート
友情とサッカー愛の融合

1990年7月7日土曜日、イタリア ローマ。1980年に世界遺産に登録されたカラカラ浴場は万雷の拍手が鳴り響いていた。6,000人の観客の拍手は、ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス、そして指揮者ズービン・メータ率いるフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団、ローマ国立歌劇場管弦楽団に送られていた。その日は、6月8日からイタリアで開催されていた第14回FIFAワールドカップ、西ドイツ(その年10月3日に東ドイツと再統一)とアルゼンチンの決勝戦(7月8日ローマ)の前日であり、イタリアだけでなく世界がサッカー熱に沸いていた。コンサート当日は、3位決定戦でイタリアがイングランドに勝利、舞台に立つ3人とともに観客が歓喜したことは言うまでもない。

パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスの三大テノールが、ライバル同士でもありながら、この決勝戦前夜祭としてコンサートを開催することになったのは、3人のサッカー愛とそして、1987年に白血病と診断されたホセ・カレーラスが闘病の末復活したことを歓迎するためだった。事実、パヴァロッティとドミンゴは、FIFAワールドカップの開会式で共に歌唱し、コンサートの収益の一部は白血病の研究と、骨髄提供者の登録支援事業に財政的支援をするホセ・カレーラス国際白血病財団へ寄付された。
当日のコンサートはイタリア放送協会(RAI)が手掛け、世界8億人が視聴、“三大テノールコンサート”のレコードは、3日間で50万枚、1か月後には300万枚、そしてクラシック界最大の1,600万枚のベストセラーとなった。このコンサートの影響は世界中に広がり、“三大テノール”の活躍がはじまった。

クラシック界の歴史を塗り替える
“三大テノール”の
記憶に残る歌声と活躍

4年後の1994年6月17日から7月17日までアメリカで開催された第15回FIFAワールドカップでの決勝戦前夜祭コンサートが再び開催された。7月16日土曜日、ロサンゼルス、ドジャー・スタジアムには5万6000人の観客が奇跡の歌声のために集まった。フランク・シナトラ、アーノルド・シュワルツェネッガー、ヘンリー・キッシンジャー、ブッシュ前大統領夫妻(1993年1月に大統領退任)等多くのセレブが彼らの歌唱を楽しんだ。世界100以上のネットワークで放映され、13億人が視聴した。その後三大テノールの世界ツアーがはじまり、日本、オーストラリア、スウェーデン、ドイツ、アメリカへと彼らの活躍は続いた。
1998年6月10日から7月12日までフランスで開催された第16回FIFAワールドカップでは、7月10日金曜日、パリ、エッフェル塔の下シャン・ド・マルス広場、10万人が彼らの歌声に酔いしれ、(映像紹介は本編にはございません。)2002年5月31日から6月30日まで日韓で開催された第17回FIFAワールドカップでは6月27日木曜日横浜アリーナで開催、5万人を超える観客を魅了した。

彼らの活躍をきっかけにオペラを見る人が増えたが、世間はその話題性だけに興味を持ち、「クラシック音楽の俗化」と評した評論家たちもいたのは事実であるが、オペラという一般の人々にはなかなか慣れ親しむことのない音楽を多くの人たちに伝えたのは、紛れもない事実である。
2007年9月6日、すい臓がんのためルチアーノ・パヴァロッティが死去。サッカーを愛してやまない“三大テノール”の前夜祭コンサートは、ローマ、ロサンゼルス、パリ、横浜の4回のみの開催で終止符を打った。ドミンゴとカレーラスの元には別の歌手との三大テノールの提案があったが、彼らは首を縦にふることはなく、パヴァロッティとの三大テノールとして人々に記憶されることを選んだ。そして、2020年、1990年から30年が経ち、パヴァロッティが他界するまで17年の三大テノールの軌跡が本作で甦ることとなった。

Character
  • マリオ・ドラディMario DRADI

    マネージャー、カラカラ浴場コンサート・プロデューサー
    ※最初の“3大テノール”競演の発案者。当時、3大テノールのリハーサルが行われたローマ歌劇場でインタビュー。ヴェローナにあるドラディの自宅にて個人所有の記録保管室を紹介。

  • ノーマン・レブレヒトNorman LEBRECHT

    イギリスの音楽ジャーナリスト/作家

  • ディディエ・ド・コッティニーDidier de COTTIGNIES

    デッカ・レコード販促責任者
    ※デッカ・レコード:イギリスのレコード会社。現在はユニバーサル ミュージック グループの傘下。

  • ライナー・ストーブ腫瘍専門医Dr.Rainer STORB

    カレーラスの担当医
    ※フレッド・ハチソンがん研究センター(アメリカ、シアトル)

  • ブライアン・ラージBrian LARGE

    オペラとクラシック音楽を専門とする世界有数のテレビ・ディレクター。

  • ブリン・ターフェルBryn TERFEL

    イギリスのバス・バリトン歌手

  • ジョセップ・ヴィヴェスJosep VIVES

    FCバルセロナ・スポークスマン

  • ニコレッタ・マントヴァーニNicoletta MANTOVANI

    ルチアーノ・パヴァロティの2番目にして最後の妻

  • ポール・ポッツPaul POTTS

    2007年イギリスで放映された“ブリテンズ・ゴット・タレント”に出場。オペラ『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」を歌唱、審査員全員と会場を熱狂させ、優勝。念願のレコード・デビューのチャンスをつかみ、デビュー作はアルバム「ワン・チャンス」(BMG JAPAN)は、2007年7月23日付で全英初登場1位、3週間連続で1位を記録した。

  • ウェイン・バルークWayne BARUCH

    舞台・TVプロデューサー

  • ラロ・シフリンLalo SCHIFRIN

    ハリウッドで活躍するアルゼンチン出身の作曲家、編曲家、ジャズピアニスト、指揮者。
    代表曲は『ダーティハリー』、『燃えよドラゴン』等の映画音楽や、「スパイ大作戦」TVシリーズ。三大テノールが選出した曲のメドレーの編曲を担当した。

  • ティボール・ルーダスTibor RUDAS

    1994年ロサンゼルス以降の三大テノール・プロデューサー

  • ピーター・オマリーPeter O’MALLEY

    MLB、ロサンゼルス・ドジャースの元オーナー

  • スティーヴ・アマーソンSteve AMARSON

    アメリカの歌手、ボイス・スタントでドミンゴ役の声を担当

  • ジョナサン・マックJonathan MACK

    アメリカのテノール歌手、ピアニスト、ボイス・スタントでカレーラス役の声

  • オーギー・カスタニョーラAugie CASTAGNOLA

    アメリカのテノール歌手、ボイス・スタントでパヴァロッティ役の声

Staff
  • 制作エルマー・クルーゼProducer :Elmar Kruse

    本作の製作会社Cメジャー・エンターテインメントの役員。Cメジャーは2006年以降バレエからヘヴィメタルまで、多くの音楽作品、映画のためのクラシック音楽、ポップスなどを多数提供している。ライブラリーにはソニー・クラシカル、ユニバーサル・ミュージック、PBSなどの合計3,000時間以上にわたるクラシック音楽作品が登録されている。2018年には北京の紫禁城で開催された世界最古のクラシック音楽レーベル ドイツ・グラモフォン”の創立120年記念コンサートを世界中に放映。2010年、2012年、2015年にはラ・フラ・デルス・バウスがバレンシアで上演した「ニーベルングの指環」、ザルツブルグ音楽祭で上演した「リトル・マーメイド」、「ばらの騎士」のソフト化で、権威あるドイツの音楽賞エコー・クラシック賞を受賞。その他、TVシリーズ“Pavarotti & Friends”(原題)のドイツ版の製作総指揮、ドイツ初となるアンドレア・ボチェッリのクラシック・アルバムを手掛け32万枚(ゴールド)の売り上げを達成するなどプロデューサーとして多くの成功を収めている。

  • 製作総指揮ジャン=アレクサンドル・ンティヴィハブワExecutive Producer: Jean-Alexander Ntivyihabwa

    1964年生まれ、アフリカのブルンジ共和国のブジュンブラとデュッセルドルフで育つ。ハンブルグとタンザニアのダル・エス・サラームでアフリカ研究、歴史、民俗学を勉強し、1994年で哲学修士号を取得。その後ミュージックテレビの分野で仕事を始め、ハンブルグの市営放送局で研修を積み、1997年には有限会社MMEテレビ・プロダクションズに入社。2000年から2008年公共部門でテレビ作品の製作総指揮を務めた。数多くのドキュメンタリー作品の脚本も手掛け、現在はパートナーとして有限会社SMPサインド・メディア・プロダクション(SMP Signed Media GmbH)の運営に携わっている。

  • 脚本アクセル・ブリュッゲマンScreen Writer: Axel Bruggermann

    ドイツで最も著名な音楽ジャーナリスト。ドイツ最大の日曜新聞「ヴェルト・アム・ゾンターク」で音楽記事編集、原稿整理編集長を経て編集長を務め、その後フリーランスとしてのテレビ関係に従事、司会者、作家として活躍。ワーグナーのオペラ・楽劇を演目とするバイロイト音楽祭の番組でバイエルン・テレビ賞を受賞。ドイツの様々なテレビ局にて政治や音楽をテーマとした数多くのドキュメンタリーの脚本と監督を手掛けてきた。政治、モーツァルトやワーグナー等の音楽をテーマにした著書も多く出版されている。ドイツ・グラモフォンのために製作した音楽シリーズ“Small Auditorium”(クリスティアン・ティーレマン、ヒラリー・ハーン、ピエール=ロラン・エマールなどが出演)で、エコー・クラシック賞を受賞。オーケストラ関係の仕事も多く手掛け、コンサート(プラシド・ドミンゴ 、フランツ・ウェルザー=メスト、クリスティアン・ティーレマンなどが出演)の司会も務める。