優勝すれば願いが叶えられる
夢のマラソン大会が、
藩の存亡と家族と仲間の命をかけた戦いに
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260年間、日本は国を守るために鎖国してきた。だが、それもいよいよ終わりを迎えようとしていた、1855年、幕末。幕府大老の五百鬼祐虎(豊川悦司)は、黒船でアメリカからやって来た海軍総督ペリー(ダニー・ヒューストン)と面談し、和親条約という名の開国を迫られる。
安中藩主の板倉勝明(長谷川博己)は、アメリカは口では和平を唱えているが、日本への侵略が目的だと疑っていた。「国と藩を守らなければならない」と腹を決めた勝明は、藩士たちの心と体を鍛錬するために「明日、十五里の遠足を行う」と宣言する。「優勝者はどんな願いも叶えられる」と聞いて、藩士たちは色めき立つのだった。
そんななか、城内で騒ぎが持ち上がる。勝明の娘の雪姫(小松菜奈)が、城を抜け出したのだ。芸術的才能に恵まれた雪姫は、江戸へ出て絵画を勉強し、いずれは異国へも渡りたいと願っているのだが、父からは激しく反対されていた。重臣の息子で、傲慢な辻村平九郎(森山未來)を婿にとって藩を治めるよう命じられ、強い決意のもと逃げ出したのだ。
城下の人々の間では、さっそく誰が1着になるかの賭けが始まった。藩で一番足が速いのは、足軽の上杉広之進(染谷将太)だと誰もが知っていた。上杉は両替商の留吉に茶屋でおごられ、1着にならなければ10両渡すと八百長を持ちかけられる。妻子の待つあばら家へ帰った上杉は、1着とお金とどちらをとるか頭を悩ませる。
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ところが、その夜、江戸城では、安中藩の人々にとって、絶体絶命の指令が下されていた。以前から勝明を「何をするかわからん」者だと警戒していた五百鬼が、安中藩の遠足を“謀反の動き”と見て、アメリカの最新式の拳銃を携えた刺客を放ったのだ。
翌朝、五百鬼の企みに気付いた男がいた。彼の名は唐沢甚内(佐藤健)、安中藩に仕える勘定方は仮の姿で、実は代々幕府の隠密として、不穏な動きを察知したら直ちに報告する役目を負っていた。藩の上司の植木義邦(青木崇高)にはもちろん、妻にさえ打ち明けてはならない秘密だった。だが、何かを感じた妻の結衣(門脇麦)は、秘かに忍びの武器を着物に仕込んだ夫に、「どうかご無事に」と声をかけるのだった。
それぞれの想いを抱えた参加者たちが、出発地点に集まってくる。どうしても娶りたい雪姫は消えたが、虚栄心から不正をしてでも1着を取ろうと気合を入れる辻村。だが、その背後には、遠足に乗じて江戸まで行こうと計画し、男装に身を隠した雪姫がいた。守衛番を解雇された栗田又衛門(竹中直人)は、最後にひと花咲かそうと、亡き親友のまだ幼い息子と出場する。
太鼓の音が響き、開始の掛け声で、一斉に元気よく飛び出す藩士たち。だが、ほどなく刺客たちも到着し、まずは関所が襲撃される。幕府か藩か揺れるなか、愛する者たちとは、すべてここで出会ったことに気付いた甚内は、仲間たちに危機を告げ、一刻も早く城へ戻ろうと全力で走り始める。
果たして、甚内は大切なものを守れるのか? そして、ゴールのその先に待つ日本の未来とは?